原因はいつも後付け 第53回 「商売におけるホームとアウェイ」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第53回》商売におけるホームとアウェイ

この連載も今回で1年を迎えることができました。
いつも読んで下さってる皆さま、本当にありがとうございます。
まだまだ書きたいことは尽きないので、2年目もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、そんな2年目の始めに取り上げたいお題。
それが「商売におけるホームとアウェイ」。

スポーツでよく耳にする、この「ホーム、アウェイ」という言葉。
一見、商売とは何の関係もなさそうに思えるこの言葉ですが、私からすると商売上手なオーナーは、ホームで戦うことの重要性がよく分かっている気がするのです


「ホームとアウェイ」。

スポーツにおいて、ホームとは自チームの本拠地、そしてアウェイとは相手チームの本拠地を意味し、当然ホームにおける試合では自チームのファンが多数の中で戦うことができるなど、自分が有利な環境で試合を進めることができます。

「それが商売と何の関係があるのよ?」なんて疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
確かに店舗商売においては、実際のお店の場所が変わることはないため、一見ホームやアウェイなんて概念は関係ないように感じるかも知れません。

ただ、私が商売上手なオーナーを見ていて感じるのは、彼らは商売において自分の店舗が勝ちやすい「ホームの基準」を作り出すのが非常に上手いということ。

これはどういう事かと言うと、彼らは集客を考える上で「立地の良さ」や「価格の安さ」と言った、大手が有利な「アウェイの基準」では決して勝負をしようとせず、自分が有利に戦える「ホームの基準」を新しく自ら考え、その価値をお客さんに分かってもらうことに力を注いでいるのです。

では、自分が勝てる「ホームの基準」とは何なのか?
その答えはお店によって様々であり、逆に考えるなら、全てのお店に共通する決まった基準がないからこそ、オーナー自身による「商売の切り口」や「お店の強みの打ち出し方」次第で、自分が勝てる「ホームの基準」を作り出すことができる訳です。

なかなか業績が思うように伸びないオーナーは、時折こんな事を口にします。

「うちのお店は立地が不利だから」
「大手の価格には太刀打ちできないから」

こんな風に感じてしまうのは、無意識のうちに自分がアウェイの基準の上で戦ってしまっていることの証であり、商売においては他店が作ったアウェイの基準で勝負をする必要なんてないという「商売の自由」を忘れてしまっているからではないでしょうか?

商売上手なオーナーは誰かが作り出した「アウェイの基準」で戦うのではなく、自らが勝てる「ホームの基準」を作り、そこでの勝負に持ち込むのが上手いということ。

スポーツの世界では、すでに決められたルールの中で1番になることが求められますが、私たち店舗経営の世界では、逆に1番になれる切り口を見つけて、そこから基準を作れば良い訳です。

せっかくスポーツではなく商売を選んだのだから、自分で「ホームの基準」を作れる楽しさを忘れてしまうのは勿体ないと感じるのは、何も私だけではないと思うのです。

相手に有利なアウェイで戦うのではなく、自分に有利なホームで戦うこと。
商売上手なオーナーは、自分が勝てる「ホームグラウンド」での勝負に持ち込むのが上手い人なのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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