第226回 お客さんは見抜いている

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

1号店を開業する際、私は集客の1つとして「月替わりのイベント」を考えていました。

「毎回、同じ商品ばかりじゃお客さんに飽きられる」
「毎月異なるイベントをやれば、来月もお店に来るべき理由を作ることができる」

そんな期待をして毎月様々なイベントを企画してはみたものの、結果的にはどれもお客さんからの反応はイマイチで、かえって不良在庫を増やしてしまうばかりでした。

「お客さんは全然イベント用に仕入れた商品を注文してくれない」
「新しい体験へのチャレンジを楽しんでくれるお客さんが少ない」

こんな風に当時はイベントがうまく行かない原因をお客さんのせいにしてばかりでしたが、今思えばお客さんは「あること」を見抜いていたのだと思うのです。


お客さんが見抜いていたこと。
それは毎月のイベントが「お客さんに喜んでもらうため」よりも、「お店が儲けたいため」に考えられたものだったということ。

もし当時の私が本当にお客さんに喜んでもらいたいと考えていたのであれば、仕入れた商品の魅力を説明する文章を考える過程にも力を注いでいたはずですし、私自身ももっと自信を持って商品を提案できていたでしょう。

でも実際は、毎月何か違ったイベントさえ用意すればお客さんは来てくれると安易に考えてしまっていたため、商品の説明についてもどこかから引用したような当たり障りのない文章の羅列で、私自身も心から自信を持って商品を提案することはできていなかったように思います。

当時の私は全く気付いていませんでしたが、いざ自分がお客さん側に立って色々なお店のイベントを見てみると、本当にお客さんに喜んでもらうために企画されたものかどうかは、その説明文やオーナーの熱量から伝わってくるものです。

そう考えると、私がイベント用に仕入れた商品が売れなかったのは当然であり、そんな自分のお店の儲けばかりを優先する姿勢を見抜かれていたからこそ、イベントだけに限らず商売そのものもなかなか上手くいかなかったのだろうと、今から振り返って思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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