第147回 同じ事実と異なる見え方

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私はこれまで多くの店長や、開業オーナーさんと一緒に仕事をしてきました。
そんな仕事をしてきた中で、私には時折思うことがあるのです。

「同じ事実も、人によって見え方は随分と違うものだな」と。


例えば、お店で新しい集客を試してみた結果、お店の存在を知った10人のうち1人が実際に来店したとします。

「10人中1人がお店に来た」という事実。

この事実も「1人しか来なかった」と見る人もいれば、「1人は来てくれた」と見る人もいます。つまり、全く同じ事実であっても見え方は人それぞれであり、その見え方の違いが次の行動に対する分岐点になっているような気がするのです。

もちろん、どちらから見た方が絶対に正しいと言うつもりはありません。
ただ、商売において「どちらから見た方が、次に打つ手が出て来やすいか」と考えるのであれば、それは恐らく後者だと私は思うのです。

「1人しか来なかった」と見れば、自分の取り組みが失敗に思え、次の一手に対する期待も持てなくなる一方、「1人は来てくれた」と見れば、自分の取り組みが小さいながらも成功に思え、その成功体験をより大きくするための次の一手に期待が持てるようになるのではないでしょうか。

開業したばかりの頃、私は「なぜ自分はこんなに失敗続きなのか」と思っていました。

その答えを今から振り返って考えるのであれば、それは目の前の事実をマイナスからばかり見ていたからであり、だからこそお店を改善するスピードも遅く、結果的に業績が上がるまでに時間がかかってしまったのだと思います。

自分の目の前に見えている結果が必ずしも自分以外の人にも同じように見えている訳ではない、ということ。そして、自分にはマイナスの結果に見える事実も、その事実がプラスに見えている人もいる、ということ。

冒頭に挙げた「10人中1人がお店に来た」という例だけを考えれば、どちらの面から事実を見たとしても、短期の業績に大した差はないかも知れません。ただ、商売の継続には常に新しい取り組みが欠かせない以上、長期で考えれば、こうした一つひとつの小さな事実の見え方の違いが積み重なって、大きな業績の違いを生んでいるような気がしてならないのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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