第136回 「パーパス疲れ」にご注意を。

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/「パーパス疲れ」にご注意を。

最近、「向かうべき方向性」や「大切にしたい価値観」を「再定義」しようとする企業が増えています。

大手さんとのお打合せでも「パーパス経営」なる言葉をよく耳にしますが、その背景は様々です。

・これまで大切にしてきたことを未来にも繋げていきたい

・多様な背景で過ごす人々が活躍できる組織でありたい

・世の中の変化に伴い、自らの存在意義を再検討したい

などなど。

どうやら、「一致団結」「阿吽の呼吸」などの「チームワーク促進」が自然と認識されていた、これまでの組織運営では、通用しづらい世の中の変化を感じます。

だからこそ、自社ビジネスを推進する組織体であることの「意義や目的」を言語化し、基軸としたいのだと思うのです。

先日、某大手さんの役員Kさんに、経営学者の名和高司さんの著書「パーパス経営 30年先の視点から現在を捉える」を薦められました。

世の中で耳にする「パーパス経営」とは、「『存在意義』に基軸を置いて経営を進める」というような意味合いで捉えられていることが多いように感じますが、著書では、パーパスを「志」と言い換え、パーパス経営とは「志本経営」と述べ、企業の「内部」から湧き出てくる「強い思い」こそが、パーパスであってほしい、とも語っています。

これまでの「20世紀型・資本経営」では、「Mission(使命)・Vision(構想)・Value(価値観)」を大切にした経営が進められてきましたが、これからの「21世紀型・志本経営」では、「Purpose(志)・Dream(夢)・Belief(信念)」を基軸にした経営にシフトしていくべき、前者は「外発的」で、後者は「内発的」なものだと紹介されています。

読書後のKさんとの打合せで、

「個人的には、外から動かされようが、内から発せられようが、『大切にしたいこと』は、最終的には、『自らが、好意的に』、『選択・決断する』ことであり、どちらでも構わない」

「それより、日本人・日系企業には、外国語を活用するよりは、『母国語を主軸』に置いたほうがスッキリするようにも感じます」

「最近の世の中は、ビジョンやミッション、そして『パーパスに疲れている』ようにも映ります」

とポツリ語るKさんのご心情に、共感しながらの帰り道。

電車の席でネットサーフィンをしていたところ、いくつかのユニークな「経営理念」を見つけましたので、それらを紹介してみます。

・キヤノングループ
共生

・伊藤忠グループ
三方よし

・永谷園
味ひとすじ

上記は、いずれも5文字以内と短く、シンプルで覚えやすく、視覚的にも、ひと目でパッと理解できます。

他には、

・壱番屋
ニコニコ・キビキビ・ハキハキ

・サイゼリア
人のため・正しく・仲良く

・ファーストリテイリング
服を変え、常識を変え、世界を変えていく

こちらは、テンポの良い3拍子で、リズミカルに覚えることができますね。

他にも、ユニークな経営理念は数多くありましたが、大切なことは、それを「実践し続ける」こと。そうすることで、世の中が豊かになっていくことでしょう。

最後に、「理念」ではなく、「定款」から、お気に入りを。

・クックパッド
経営理念:毎日の料理を楽しみにする

定款:世界中のすべての家庭で毎日の料理が楽しみになった時、当会社は解散する(2018年2月条項追加)

素敵なメッセージですよね。

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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