原因はいつも後付け 第57回「努力しているのか?サボっているのか?」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第57回》努力しているのか?サボっているのか?

私事ではありますが、今週で1号店の開業から19年目を迎える事となりました。
キリはあまり良くありませんが(笑)、せっかくのタイミングなので、今回は1号店を開業した時の一番の失敗だったと私が考えている「価格」について、改めて自分なりの考えを書かせていただこうと思います。


《自分は努力しているという錯覚》

1号店を開業した時のお店の一番のウリ。
それは、このコラムでも度々書いてきた通り「価格の安さ」でした。

自分の商品にいくらの値段を付けるのかは、お店の自由。
お店によって対象とするお客さんも違えば、提供したい価値も違うのだから、一概に安売りが良い悪いと判断することはできないと思います。

ただ、開業時に安売りを選択した当時の私の問題点。
それが「自分は努力して安売りをしている」と考えていたこと。

「自分は儲けを限界まで削って努力している。」
「こんなに努力しているのだから成功できるはず。」
これが当時の私の心境でした。

もしかしたら、このコラムを読んでいただいている方の中には、当時の私と同じ心境で低価格の商売をしているオーナーさんもいらっしゃるかも知れません。

でも今から振り返って考えてみると、この「自分は努力している」という認識は、完全に間違っていたと思うのです。

《自分はサボっているという事実》

「自分は努力している」という認識が間違っていたと考える理由。
それは、儲けを削るだけの安売りは、頭を使わずにできる「一番楽な集客方法」だから。

お店に来るべき理由の言語化。
注文したくなるメニュー作り。
リピートしたくなるお店の仕組み。

本当に努力していたのなら、やれる事は他にも山ほどあった訳です。
にも関わらず私がやっていたのは、本来「売りたい価格」で売るための努力をせず、「売れそうな価格」をメニューに書き出しただけ。

つまり私は「努力して安売り」をしていたのではなく、「サボって安売り」をしていたということ。

よく、「安売りは失敗する」と言われます。
確かに価格競争では大手が有利なので、仮に多くの努力を重ねたとしても個人店が勝てる確率は低いのかも知れません。

ただ、私自身の失敗の原因を振り返って考えるなら、それは売れるための具体的な努力をしていないにも関わらず、自分は努力をしていると勘違いしていた事実そのものであり、一番楽な集客方法しかやっていないお店が他のお店より集客できる理由なんてないと言うこと。

自分は努力しているのか?サボっているのか?

この違いに気づかない限り、単なる安売りは自分だけが認めてくれる努力に過ぎず、本当の努力に気づいて行動することでしか儲けを出すことはもちろん、集客すること自体も出来ないのだと、開業して19年目を迎えた今は思うのです。

2002年10月に開業した1号店の外観。
今から思えば、安売り以外にやれる事がたくさんあったと思えるのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから