第168回 商品出数の変化から今後の店舗経営を考える

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、直営店舗を担当している役員と話をしている時に、興味深い話を聞きました。
それが「自粛明けから商品の出数が大きく変わっている」という話。

確かに商品の出数を自粛前と比べてみると、かなりの変化が起きていることに気づきます。
そして、出数が増えた商品グループと出数が減った商品グループを見比べると、それぞれのグループに「ある共通の特徴」があり、この特徴こそがこれからの店舗経営を考える上で大事なことだと感じたのです。


まず、出数が増えた商品に見られる共通の特徴というのが、
「他の商品と比べて、提供に手間がかかる」
「お店のオリジナル商品である」
「全商品の中で価格が高めである」ということ。

逆に、出数が減った商品に見られる共通の特徴というのが、
「他の商品と比べて、提供が楽である」
「他のお店にもありそうな商品」
「全商品の中で価格が安めである」ということ。

この事実から考えられるのは、外食する回数が減った分、一回あたりの外食に求める体験価値が上がったということではないでしょうか。

市場が小さくなるという現実に直面した時、私たちはつい「競争が激しくなる=安くしないと集客できない」と考えてしまいがちです。

ただ、今回の私のお店に起きている変化を見る限り、お客さんが求めているのは低価格という価値よりも、お店でどんな体験ができるのかという価値であり、そう考えるのであれば商品開発の自由度が狭められる低価格に向かってしまうことこそが、自らを勝ち目のない戦いに追い込む行為と言えるのではないでしょうか。

外食回数が減ったから、より価格競争に走るのではなく、外食回数が減ったから、よりお店で提供する体験価値を上げる。

これが出数の変化から見えてくる今後の小規模経営の方向性であり、出数が増えた商品に共通する3つの特徴こそ小規模経営が得意とする分野と考えるならば、いま起こっている市場の変化はむしろチャンスと言え、試行錯誤を楽しめるオーナーにとっては、より商売が面白くなる時代が来ているような気がしてならないのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから