第163回 他店を見ても何も変わらない

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

以前、このコラムでも何度か書いた気がしますが、私はお店を開業してからしばらくの間、毎日最寄り駅前に行ってチラシを配っていました。

チラシを配る目的は当然、自分のお店の集客を増やすことだった訳ですが、実は駅前に行ってよくやっていた事がもう一つあります。

それが「競合店のお客さんの入り具合を調べる」こと。

駅前の大手チェーン店が賑わっていれば「やっぱり立地の良いお店は有利だよな」と羨んでみたり、少し路地を入った個人店が空いていれば「このお店も、うちと同じ様な状況だな」と妙な安心感を持ってみたり。

でも、今から振り返ってみると思うのです。
「こんな事をしていたから売れるようにならなかったんじゃないか」と。


なぜ、当時の私は頻繁に競合店の状況を見に行っていたのか?
それは多分、自分のお店が売れない理由を自分の中で正当化したかったからだと思います。

「大手が賑わっているのは立地が良いから」
「他の個人店も空いているんだから、自分のお店が暇なのも仕方ない」

当時は本気でこんな風に考えていました。
もしかしたら私と同じように、競合の状況が気になって仕方がないという方もいるかも知れません。

でも今、改めて考えてみれば、他のお店の来店状況をどんなに詳しく知ったところで、自分のお店の現状が変わるはずもなく、他店と比較して自分のお店が売れない理由をどんなに正当化したとしても、そのお店が売れる要因にはならないでしょう。

お店の商品にどんな改善ができるのか?
毎日配っているチラシにはお客さんが求めている情報が書かれているのか?
初めて来てくれたお客さんが、また来たいと思ってもらえるお店作りができているのか?

他店の様子を見に行く時間があるならば、その時間を自分のお店を見直す時間に充てるべきであり、自分のお店を見ずに他店ばかりを見ているお店にお客さんが興味を持ってくれる事なんてないんじゃないか、と競合ばかりを気にしていた当時の自分に伝えたいのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから