第196回 不安と安心の判断基準

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「お店で何かしら新しい取り組みを始める」
これは大切なことだと私は思います。

現状を維持することだけに満足せず、日々改善できるところを探して新しい取り組みをしていくからこそ、時代の変化にも対応していけるお店ができるのでしょう。

ただ、そんな大切な「新たな取り組み」ではあるものの、そこで私たちが気をつけておかなければいけない点もあると思うのです。

それが「その取り組みをしようと思った理由」なのです。


新しい取り組みを始めようと思った理由。
それは人によって様々だと思いますが、中でも私たちがよくやってしまいがちな選択というのが「他のお店もやっているから」という理由ではないでしょうか。

「他のお店もやっているから、自分のお店もやれば安心だ」
こう考えてしまうのは、「多数の選択が正しく、少数の選択が誤り」と判断してしまっているからだと思います。

では、なぜこう判断してしまうのかと考えてみると、その原因はもしかしたら小学校や中学校の経験に基づいているのかも知れません。テストなどで答え合わせをした時に、自分だけ答えが違っていて不安を感じた経験があるのは私だけではないはず。

確かに正解が明確に決まっているテストであれば、これでも良かったのでしょう。

ただ、商売は学校のテストとは異なり正解が決まっていないため、多数のお店が選んでいる選択が正しいとは限りませんし、むしろ飲食店の多くが開業して数年で廃業しているという事実から考えれば、多数のお店が選んでいる選択を安易に真似しようとすることこそが廃業に近づく選択とも言えるのではないでしょうか。

「他のお店もやっているから、自分のお店もやれば安心」

これは見方を変えれば、「他のお店はやっていないから、自分のお店もやるのは不安」と言えるのかも知れませんが、商売においては他店との違いこそが選ばれる理由になると考えれば、他のお店がやっていない事をやるのは不安と捉えるよりもチャンスと捉えた方が商売は上手くいく気がしてなりません。

何が不安で、何が安心なのか。

他のお店がやっていない事をやるのは不安かも知れません。
でも、私たちが本来もっと不安を感じる必要があるのは、他のお店がやっている事ばかりを真似している状態であり、そう考えるのであれば、私たちが一度立ち止まって考えるべきなのは「不安と安心の判断基準そのもの」ではないか、と私は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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