第108回 毎日全力で営業してるのに儲けが増えません

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

今回のお悩み相談のゲストは2店舗目を出店し、ここから一気に儲けを増やしていこうと目論んでいる、開業2年目の辻本くん。

お店が増えたこともあり、今まで以上に毎日の営業に全力で取り組んでいるものの、その思いとは裏腹に、なかなか儲けは増えていかない様子。

一体、彼の取り組みのどこに問題があるのでしょうか?


「商売を始める以上は、儲けるために全力で働く」
こう考えるのは何も商売を始めて数年の辻本くんだけではないでしょう。

実際に、商売を始めてからは儲けを増やすために休日を減らしたり、一日の仕事時間を長くしたりする方もいらっしゃるのではないでしょうか?

事実、2004年当時の私も休日は週に一日程度で、一日12時間以上は働いていた記憶があります。では、なぜそんなに休まず働いたにも関わらず、儲けを増やすことができなかったのか?

今から振り返って思う、私なりの答え。
それは「毎日全力で営業に取り組んでしまっていた」から。

そんな事を言うと、当時の辻本くんはきっと、こう反論してくるでしょう。
「毎日全力で営業して、何が悪いんだ!」と。

確かに毎日全力で営業する姿勢は、一見正しいことのようにも思えます。
でも、起業してから10年くらいが経った時、私はようやく気づいたのです。

「どんなに頑張っても、売れない時は売れない」と。

飲食業には繁忙期と閑散期があります。
当然ですが、繁忙期は儲けを増やしやすい一方、閑散期に儲けを増やすのは困難です。

それでも当時の私は、「閑散期でも全力で売る努力をすることこそ、本気で商売をやってる証だ」と考え、閑散期でも売上を伸ばす努力をし続けました。

その結果、何が起こったのか?

せっかく繁忙期で稼いだ儲けを閑散期の売上を伸ばす取り組みに使ってしまい、年間を通して考えれば、ほとんど儲けは残っていなかったのです。

そんな失敗を約10年も繰り返し、ようやく私がたどり着いた解決策。
それが繁忙期と閑散期を織り込んだ、年間計画を先に立てるという方法。

私たちは商売をしていると、つい目の前の売上ばかりを追いかけてしまいがちです。ただ、目の前の売上を全力で追いかけるということは、逆を返せば将来への種まきを怠っていると言える訳であり、そんな商売を続けている限り儲けが増えていくことはないということ。

「事前に自分の計画を決めるからこそ、目先の売上に流されることなく種まきができ、種まきをするからこそ、繁忙期の収穫が増えるのではないか。」

私はそう、2004年の辻本くんに伝えたいのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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