原因はいつも後付け 第69回「選ばれないお店」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第69回》選ばれないお店

 

「お客さんが店内にいる限り、お店は閉めない。」
「お客さんが望むものがあれば、出来る限り期待に応える。」

これは私が開業する時に決めたことです。
なぜ、こんな事を決めたのか?
それは、お客さんの期待に応え続ければ、売れるお店になれると思ったからです。

商売を始める時に、こうした考えをしてしまうのは、私だけではないでしょう。
事実、私が開業をお手伝いしてきたオーナーさんの中にも、開業時にお店を閉める時間を決めずに営業をしようと考える方もいらっしゃいます。

でも、この考え方って間違っていたと今では思うのです。
理由は、お客さんの期待に応えようとすればするほど、売れないお店になっていったから。

お客さんの期待に応えれば、満足度は上がるはず。
じゃあ、なぜ私のお店は期待に応え続けたにも関わらず、売れなくなっていくという結果にたどり着いたのか?

私が考える、その結果を招いた原因。

それは、お客さんの要望を聞こうとするほど「いま行く必要がないお店」になっていってしまうから。「いつでもやってるから、今から行こう」ではなく、「いつでもやってるなら、今はいいや」になるということです。

これは自分がお客さんの立場になってみれば分かること。

短い営業時間で、こだわりの商品を提供しているお店。
いつでもやってて、何でも言うことを聞いてくれるお店。

こんな2つのお店があった時、私がお客さんならまず前者のお店に行くでしょう。そして、どこもお店がやっていないという状況になった時、初めて後者のお店が選択肢として出てくるのだと思います。

そして、これは他の仕事でも同じなのではないでしょうか?

自分に解決したい課題があった時、最初に相談するのはその分野に強い会社や人であり、
「何でもやります」という人に最初から相談しに行く人なんていないでしょう。

つまり、自分で制限を作るからこそ、そこに選ばれる理由が生まれるのであり、制限を広くすることでより多くのお客さんに来てもらおうするほど、自ら選ばれる順位を下げることになってしまうということです。

だから私は当時の自分に言いたいのです。
何でも言うことを聞くお店は「最初の選択肢」ではなく、「最後の選択肢」になるのだと。

商売に制限を設けるからこそ選ばれる。
商品も自分の好きなものに絞り込んだ結果、お店の売上は伸びていったのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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