// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
さて今回は再び、開業間もない辻本くんのお悩み相談。
お客さんに色んなカクテルを楽しんで欲しくてバーを開業したにも関わらず、低価格ビールばかりが売れて、カクテルが全く売れていない様子。
「結局、お客さんは安い商品しか頼んでくれないのか…」と、商品が売れない原因は「お客さんが低価格を求めているからだ」と決めつけて考えてしまっているようにも見える辻本くん。彼の考えは本当に正しいのでしょうか?
「色んな商品を取り揃えているにも関わらず、低価格商品しか売れない。」
こんな経験があるのは、開業したばかりの辻本くんだけではないでしょう。
そんな時、私たちはつい「お客さんは低価格を求めている」と考えてしまいがちです。
ただ、これまで店舗商売をしてきた中で分かったのは、「お客さんは低価格を求めている」のではなく、「価格でしか決められないお店が多い」ということ。
その分かりやすい例が、私の1号店のメニューでした。
私のお店は「色んなカクテルを楽しんで欲しい」と願っていたにも関わらず、メニューにはカクテル名が所狭しと並び、その横に価格の一覧が書いてあるだけでした。今から思えば当たり前の話ですが、どんな飲み物かが想像できなければ、頼んでくれるはずもありません。
つまり私の1号店は、「色んなカクテルを楽しんで欲しい」というお店の理想と、「メニューの作り」にズレがあったことが原因で、お客さんがビール以外を注文しにくい状況を私自身が作り出してしまっていた訳です。
1号店を開業してから現在まで19年間、記憶に残っているだけでも私のお店はこれまで7回ほど大幅なメニュー構成の変更をしてきました。その経験から確信したのは、メニューの構成次第で商品の出数は大きく変えられるということ。
低価格商品ばかりが売れるのは、決してお客さんが低価格を求めているからではなく、その価格でどんな体験ができるのかが分からないものにはお金を使いたくないから。
商品が売れない原因をお客さんのせいにしている限り、そこに商売の楽しさはなく、いかに商品に興味を持ってもらえるかを考えてメニューを始めとしたツールを改善するからこそ、売れた時の商売の楽しさがあるんじゃないかと、私は2003年の辻本くんに提案したいのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/