第177回 何のために仕事をするのか

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「何のために仕事をするのか?」
この問いに対する答えは人によって異なると思いますし、誰にとっても必ず正解と言える答えもないでしょう。

そんな正解のない問いではあるものの、一番多いと予想される答えというのが「お金のため」ではないかと思います。私自身、自分で商売を始めようと考えたきっかけの1つも、「もっとお金を稼ぎたい」という欲求だったので、「お金のために仕事をする」という考えを否定するつもりはありません。

ただ、否定するつもりはないものの、同時にこんな疑問も湧いてくるのです。
「じゃあ、なぜ生涯お金に困らなそうな人でも、仕事を続けている人が多いのだろうか」と。


仕事をするのはお金のため。
こう考えれば、お金に困らなくなった人たちの多くは仕事をしなくなるはずです。

にも関わらず、こうした人たちでも仕事を続けている人が多いという印象から考えられるのは、こうした人たちは「お金に代わる何か」を仕事に求めているという事ではないでしょうか?

その答えを考えてみた結果、私が行き着いた答え。
それが「自分のアイデアで喜んでくれる人がいると実感する事」じゃないかと思うのです。

こんな事を書くと「そりゃお金持ちになれば、そんな余裕も出てくるでしょ」と思われる方もいると思います。これは、お金を稼ぐという目的を達成したからこそ、お金以外の目的を持つことができるのだという考え方であり、優先順位で言うならば「自分のお金が先で、他人の喜びが後」と考えているといえます。確かにそうした考え方も間違ってはいないのかも知れません。

でも逆に、こうも考えられると思うのです。
「自分以外の人たちに喜んでもらう事を優先していたからこそ、多くの人から必要とされる仕事ができ、必要とされる存在になった結果、お金に困らなくなったのではないか?」と。

つまり「他人の喜びが先で、自分のお金が後」ということ。

「何のために仕事をするのか?」
冒頭に書いたとおり、この問いに正解はないと思います。

それでもやはり、お金に困らなそうな人ほど仕事を楽しそうに続けている姿をみると、自分のお金に対する欲求のために仕事をするよりも、他人に喜んでもらうために仕事をすることこそが仕事が上手くいく要因であり、逆に考えれば「もっとお金を稼ぎたい」という自分の欲求を優先して考えていた開業時の私の商売が上手くいかなかったのも納得なのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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