本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
今年の3月、私のお店で「ある商品」がメニューから消えました。
この商品は創業当時からメニューに載り続けてきた数少ない商品の一つであり、そう考えるとこの商品は約20年売れ続けてきたことになります。
メニューから消した理由は、今回の本題ではないため端折りますが、売れなくなったからではありません。
そんな20年続いた商品が消えたメニューを改めて見た時、私の中にふと、創業当初に感じていた不安が思い出されました。それが「同じ商品を売り続けたらお客さんに飽きられるんじゃないか」という不安だったのです。
「自分のお店が売れるようにならないのは、商品がお客さんに飽きられているからだ」
一号店が軌道に乗る前、私はよくこんな事を考えていました。
せっかく集客しても、毎回同じ商品だったらお客さんは飽きてしまう。
お客さんが商品に飽きてしまうから、リピートされなくなる。
リピートされないから、いつまで経っても繁盛しない。
当時の私の頭の中はこんな思考だったと思います。
そのため、実際に私は商品を頻繁に入れ替えることで、集客を増やそうとしてはみたものの、残念ながらお店は売れるようにはならず、むしろお客さんがさらに減ってしまうという結果になりました。
当時の私は、なぜ期待通りに売上が伸びないのかが分かりませんでした。
でも、今から考えると商品を頻繁に入れ替えても売れなかった理由が分かります。
その理由というのが、「お客さんはそもそも商品に飽きてなんかいなかった」ということであり、これは同じ商品が20年間売れ続けたという事実からも間違っていないと思うのです。
では、なぜ当時の私が「お客さんが商品に飽きているのでは?」という仮説を立ててしまったのかと考えてみると、それは「本当に商品に飽きていたのはお客さんではなく、実は自分だった」ということです。
「お客さんに商品が飽きられているのでは?」
商売をしている中で、こんな気持ちになるのは私だけではないと思います。
でも、繁盛しているお店が商品を頻繁に入れ替えているのかと考えてみると、そうは思えませんし、むしろ安易に商品を入れ替えたりせず、今ある商品をより美味しく提供できるように掘り下げているからこそ、お客さんからも信頼されているのではないでしょうか?
商品がお客さんに飽きられていると感じたら、まずは「本当に商品に飽きているのは誰なのか」と考えてみること。今ある商品を掘り下げる興味が湧かないのであれば、商品に飽きているのはお客さんではなく自分自身であり、そんな自分が掘り下げる興味を持てない商品を扱っているお店が売れないのは当然だったのでしょう。
自分で商売をしていると売る商品は自分で決められる分、今ある商品以外に目移りしてしまいやすいのかも知れませんが、そんな安易に商品を入れ替えるお店こそ、こだわりを感じられることもなく、こだわりの感じられないお店こそ本当にお客さんから飽きられてしまうのではないかと、今は思うのです 。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/