第230回 客数の不足を単価でカバーするという考え

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

売上=客数×客単価。
商売をやっている人でこの式を知らない人はいないでしょう。

でも、私たちはこの式を当然のように知っているからこそ、集客に苦戦している時にこう考えてしまうのではないでしょうか?

「お客さんの数が足りないなら、単価を上げる方法を考えよう」と。


客数が足りないなら、単価を上げれば売上は維持できる。
この考え方は数式上、間違っていないと言えます。

ただ、数式上は正しかったとしても、それが現実的に可能なのかと考えると、私の経験上では難しいのではないかと思えて仕方がないのです。

というのも私自身、過去に何度も客数の不足を単価でカバーしようと取り組んできてはみたものの、客数の不足をカバーできたと言えるほど上手くいったという記憶はなく、さらにこれまでの経験を振り返って考えると、単価とは「上げるもの」ではないように感じているからです。

私にはこれまで店舗商売を続けてきて分かったことがあります。
それは、単価というものはお店が混雑して盛り上がっている時ほど上がりやすく、逆にお店が閑散としてシーンとしている時は下がりやすいということ。

つまり、単価を上げて客数の不足をカバーしたいと考えている時は、お店にお客さんがあまり来店されていないため単価は下がりやすい状況ということであり、私はそんな状況において単価だけを上げようとしていたから、結果的に上手くいかなかったのだろうと思うのです。

売上を伸ばすために客数と単価のどちらを上げるのか?

こう考えたときに単価を上げる方が簡単そうに感じてしまうのは、開業時の私だけではないでしょう。

でも現実はお客さんが増えた結果として単価も上がってくるという順序だとするならば、私たちが先に取り組むべきなのは単価を「上げようとする」ことではなく、お客さんの数を増やすことによって単価が「上がってくる」状況を作り出すことではないでしょうか。

「売上=客数×客単価」という数式。

確かにこの数式は間違ってはいないのかも知れませんが、実際の商売においては客数を先に増やすことをしない限り単価を上げるのは難しく、また単価を上げる取り組み自体は決して無駄ではないものの、それは客数が増えてこそその効果を発揮するものであり、この順序を間違えて取り組んでいる限り、私たちが見込んだ数式上の売上にたどり着くことはないと私には思えるのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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