第219回 商売の意外性

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

自分では売れる自信のあった商品が売れず、そんなに期待していなかった商品が売れる。
商売をやっている人であれば、誰もが一度や二度はこんな経験をしているものではないでしょうか?

そんな時、「自信のあった商品が売れなかった」という事実の方に目が向きがちなのは私だけではないはず。

でも、商売を継続していくという観点から考えると、私が本来注目すべきなのは前者の売れなかった商品よりも、むしろ期待していなかったのに売れた後者の存在のような気がしてくるのです。


期待していなかった商品が売れた。
こんな風に書くと、自分でも商売のセンスがないような気がしてきますし、実際に私よりはるかに高確率でヒット商品を狙って作ることができる人もいるのでしょう。

ただ、同時にこうも思うのです。
「もし自信のある商品だけを売ろうとしていたら、期待していなかったけど売れた商品に助けられることもなかったよな」と。

「商売をする以上は、自信のある商品をお客さんに届けたい」
これは商売をする人の多くが望むことでしょう。

でも、私の経験を振り返ってみた時に、自分にとって自信のある商品と、お客さんがよく注文してくれる商品にズレが生じる場合があるというのが現実であるならば、私たちが商売を続けていくうえで意識しておくべきなのは、たとえ自分にとっては事前の期待値が高くない商品であっても「まずは一度売ってみる」という選択をすることなのではないでしょうか?

商売を継続していける要因は決して一つではないと思いますが、私の商売が期待していなかった商品に助けられてきた経験から考えると、売ってみないことには何がお客さんにとっての良い商品なのかを知ることはできず、仮に自信のある商品だけを売ろうとしていたら現在まで商売を続けてくることはできなかったのではないかと思えます。

そう考えると、続いていく商売に必要な要素の一つは、期待していなかった商品が売れるという意外性にこそあり、逆にお客さんの声を聞くよりも前に自分で商品を売らないと決めてしまう事こそが意外性を失う原因となり、結果的に商売の継続を難しくしてしまうのかも知れません。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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