第130回 初動が早い人の思考

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

先日、あるオーナーさんのお店に行ってみた所、店内の様子が以前とだいぶ変わっている事に気がつきました。そこで内装の変更についてオーナーさんに話を聞いてみると、嬉しそうにこんな話をしてくれました。

「この新しい照明でお客さんに今までよりもリラックスしてもらえるんじゃないか。」
「こっちの個室は今までよりも非日常感を出してみた。」などなど。

そんな話を聞いていて、つくづく思ったのです。
「商売上手な人って初動が早いよな」と。


お店の経営が上手くいっているオーナーに共通して感じる「初動の早さ」。
では、なぜこうしたオーナーは行動するまでが早いのか?

私が考える、その答え。
それは何事を試すにしても、事前に上手くいくかを考えるよりも、やってみた結果を見てからどうするかを考えているからだと思うのです。

私たちは何かを試そうと考えた時、どうしても期待通りの結果を得ようと考えすぎるあまり、初動が遅くなりがちです。ただ、商売上手なオーナーを見ていて感じるのは、彼らは試してみる前に考えすぎるのではなく、まずは小さく試して、その結果を見て次の行動を考えているということ。

つまり、試してみた結果は、そこで終わりの結果ではなく、次の行動を考えるための判断材料であり、目先の成果に囚われすぎないから早く行動ができ、早く行動し続けているから判断材料も多く集まっているということ。そして、多くの判断材料の中から選択できる状況を作っている事実こそが、商売が上手くいくという結果を生み出しているように思えるのです。

逆に考えるならば、目先の失敗を避けようとするあまり、事前に考えることに時間を使うほど、結果から得られる判断材料は少なくなり、少ない判断材料の中でしか選択できない状況こそが商売が上手くいかない原因とも言えるのではないでしょうか。

試す前に考えすぎるよりも、試した後に考える。

この「考えるタイミングの違い」が初動の早さの理由であり、商売では何かを試したとしても期待通りの結果にはならない事の方が多い事実を考えれば、事前に考えすぎるよりも初動を早くし、多くの判断材料を集めた方が結果的に商売が上手くいくのは当然だと、冒頭のオーナーさんを見ていて感じたのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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