本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
私の1号店は開業から繁盛するようになるまで1年半かかりました。
時間はかかってしまったもののその後は順調で、お客さんによる紹介集客だけで売れるお店になることができました。
「これでもう、集客の心配をしなくてよくなった」
そう感じた私は、この時に新しい集客を試すことをやめました。
でも今から振り返って考えると、この時の判断こそが後々の苦戦に繋がってしまったように思えるのです。
「商売が順調だから新しい集客を試すのをやめる」
当時の私はこの判断に何の問題も感じていませんでしたし、私と同じように商売が軌道に乗った時点で新たな試みをやめてしまうオーナーは意外と多いのではないでしょうか。
でも、この状態は見方を変えれば現状を維持しているだけであり、何かを試すことによって新しい発見や気づきを得て、変化し続けることこそが商売の存続に欠かせないとするならば、いま売れているからといって現状維持だけで満足していた期間は完全にサボっていた期間といえます。
そして実際にその数年後、新しいお店を出店しても軌道に乗せられないという事実に直面してようやく気が付いたのです。
「順調だった時にもっと新しい集客方法を試しておくべきだった」と。
もちろんお店が繁盛するかどうかは、集客方法だけに原因がある訳ではありません。
ただ、それでもやはり、様々な集客方法を試した経験があるのとないのとでは、次の一手が変わってくるのは事実ですし、何よりお店が赤字の状態になってしまった後では選べる選択肢自体が少ないことを考えれば、商売が順調だった時にもっと新しいチャレンジをして、選択肢を増やしておく必要があったと思うのです。
つまり、新しいチャレンジをする緊急性のない時こそが新しいチャレンジをするベストタイミングであり、逆に新しいチャレンジが必要になってから何かを始めるのでは遅すぎるということ。
私の実感では商売で何かを試したとしても、その大半は期待通りになりません。
だとするならば大切なのは、期待通りにならない失敗をいつ経験しておくかというタイミングであり、大半が期待通りにならないからこそ順調な時にチャレンジを積み重ねておいた経験が次のピンチに役立つのだ、と自身の経験を振り返って思うのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/