本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
商売を始めたばかりの頃、私は競合するお店の様子をよくチェックしていました。
「あのお店よりも人気のお店になりたい」
「新しくできたお店には負けたくない」
競合する他店よりも人気になることができれば、飲食業で生き残ることができるはず。だから他店の様子をチェックすることが重要である。
当時の私の思考回路はこんな感じだったと思います。
もしかしたらこのコラムを読んでくれている方の中には、当時の私と同じ考えの方もいらっしゃるかも知れません。
でも残念ながら、こうした取り組みを続けている間、私のお店が他店よりも繁盛することはなかったのです。
そんな取り組みを続けていた頃から約1年半。
私は何とか1号店を繁盛店と言えるお店にすることができましたが、その頃にはもう他店の様子をチェックするようなことはしていませんでした。
つまり、他店の動向を見ていた時は繁盛せず、他店の動向を見なくなったら繁盛したと言うこと。正直な話、他店の動向をチェックすることと自店舗の業績の良し悪しの間にどんな関係性があるのか、正確なことは分かりません。
ただ、当時のお店の取り組みを振り返ってみて変わったことがあるとすれば、それは他店の動向に意識を向けるよりもお店に来てくれているお客さんの満足度に意識を向けるようにしたということ。
「初めて来てくれたお客さんが不安を感じるポイントはどこなのか?」
「座席数を最大に埋めることを優先するのか、お客さんが居心地良く過ごせる席に座ってもらうことを優先するのか?」
「リピーターさんに接する際の距離感はどれくらいが良いのか?」
こんな事を毎日お店で話し合うようになった結果、気がつけば他店の存在が気にならなくなり、お客さんの満足度に集中し続けた結果、繁盛に繋がったように感じます。
そう考えると、「他店よりも人気になりたい」とか「負けたくない」という感情は、その時点で意識がお客さんよりも他店に向いてしまっている可能性があり、意識が他店に向いていたからこそ繁盛しなかったのかも知れず、逆に考えれば、今いるお客さんに集中し、他店の存在が気にならない状態になることこそが、繁盛への第一歩なのではないか、と今は思うのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/