第242回 商売をする喜びはどこにある?

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売を始めようと考える人が、起業後に期待しているものは何なのか?
もちろん答えは一つではないでしょうし、どの答えが正解というのもないと思います。

では私が起業するときに期待していたものが何だったのかと振り返って考えると、それはお金と自由だったように思います。

毎月安定してお金を稼げる保証はない一方で、会社に所属していた時よりも多くのお金を稼げる可能性がある。誰に決められることもなく、休みたい日を自分で決められる、といった期待。

結果的に起業当初は売上が上がらなかったため、お金も自由も会社員時代よりはるかに少なくなってしまった訳ですが、そんな経験をしてきた中で感じたのは、自分で商売をやることの喜びは、お金と自由以外のところにあったということなのです。


自分で商売を始めたことで感じられた喜び。
それは「自分が考えた商品やサービスを必要としてくれる人がいる」と実感できる瞬間。

商品が売れる事でお客さんがまだ気づいていないニーズを自分が掘り当てたような感覚。
その商品を考えたことで喜んでくれるお客さんがいるという実感。

こうした経験こそが自分で商売をやることの面白さであり、醍醐味だと今は思うのです。

一方で、私たちはつい他店で売れている商品を自分も真似して売れば楽に稼げるのではないか、と考えてしまいがちな気がします。確かに短期で見れば自分で商品を考えていない分、楽もできますし手っ取り早く稼ぐこともできるのかも知れません。

ただ、このように他店の商品を真似して売るという選択は、自分で商品を考えていない分、お客さんのニーズを掘り当てるような感覚や自分がお客さんに喜んでもらえる商品を作ることができたという実感を得られなくなる選択であり、自ら商売の面白さを捨ててしまう選択とも言えるのではないでしょうか?

もちろんお金を稼ぐことの大切さを否定するつもりはありませんが、短期でお金を追いかけようとするあまり、お客さんのニーズを掘り当てる面白さやその瞬間の喜びを失ってしまうのであれば、それこそが自分で商売をする上での本当の損ではないか、と今は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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