第243回 間違った差別化

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売を始める時、差別化について考える人は多いのではないでしょうか?

他店と同じじゃ選ばれる理由がない。
他店と違いを作ることで、選ばれるお店になることができる。

私自身もこのように考えた結果、奇抜なネーミングを商品に付けたり、普通のバーではあまり見ないようなカクテルをオススメしたりしていた訳ですが、今から振り返って考えると当時の私はどうも差別化という意味を間違えていたように思うのです。


他店と違いを作ることで、選ばれるお店になることができる。
私は今も、この考えが間違っているとは思いません。

では、当時の私は何を間違えていたのかというと、それは「違いの作り方」だったと思うのです。

奇抜なネーミングや珍しいカクテル。
実際、こうしたものは他のお店にはなかったかも知れません。

ただ問題だったのは、確かに私が差別化しようと作り出したものは他のお店にはなかったものの、同時にそれはお客さんからも求められているものではなかったということ。

差別化という言葉を聞いて「他がやっていないことをやる」と考えるのは私だけではないと思います。でもどんな商売をやるにせよ同業のお店があるならば、お客さんが求めているであろうニーズの大半は他店によって満たされている場合がほとんどであり、違いを作ろうとするほどお客さんのニーズから離れていってしまう訳です。

じゃあ、「他がやっていないことをやる」という選択以外で違いをどう作るのかと考えると、それは他がやっていることなどを気にせず、「自分が本当にこだわりたい部分を掘り下げる」ということではないでしょうか?

開業当時の私は「他店がやっていないこと」に差別化の答えがあると考えていました。

でも今から振り返れば、奇抜なネーミングや珍しいカクテルといったものこそ真似しようと思えば簡単に真似できる取り組みであり、逆に「他店がやっていること」だったとしても、そこが本当に自分がこだわりたい部分なのであれば、そこを深く掘り下げ続けることから生まれる違いこそが、簡単には真似できない本当の差別化になるのではないか、と今は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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