第162回 無意味なミーティング

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私は仲間3人と一緒に1号店を開業しました。
当時の私たちが直近で目指していたのは、とにかく4人が報酬を得られる儲けを出すこと。

その目標を達成させるべく、営業終了後には毎日4人でその日の営業を振り返るミーティングのような時間を設けていました。でも、今から当時のミーティングを振り返ってみると、つくづく思うのです。

「このミーティングは全く意味がなかったな」と。


毎日、その日の営業を振り返って話し合う。
これは一見すれば、繁盛店へ向けた意欲的な姿勢に見えるかも知れません。

事実、私自身もそうした意識があったからこそ、営業後の疲れた状態でも欠かさずミーティングを行っていた訳です。

じゃあ何故、このミーティングが無意味だったと今は感じるのか?
それは、当時の振り返りには「仮説と改善」がなかったから。

「今日は団体さんが多かったから売れた」と喜んでみたり、「今日は単価が伸びなかったから売れなかった」と悲観してみたり。

本来、こうした振り返りとは何かしら自分なりの仮説があり、それに対して具体的な改善策を試してみるからこそ結果の違いを振り返る意味がある訳で、私のお店のように何の改善もしていないお店がその日の営業だけに限らず、一週間、一ヶ月間を振り返っても、そこから得られるものなんてないでしょう。

何の改善もせずに売れたならそれは単なる偶然でしかなく、逆に何の改善もせずに売れないならそれは当たり前の必然だったということ。

私は毎日ミーティングをすることが本気で商売していることの証のように考えていた気がします。でも今から思えば、自分なりの仮説に基づいた改善を本当にしているならば、その結果を検証するまでにはある程度の期間を設ける必要があるはずです。

つまり私は毎日、その日の営業を振り返るミーティングをすること自体が目的になってしまっており、その内容がお店の具体的な改善に繋がっているのかどうかという、本来の目的を見失っていたということ。

振り返りは仮説と改善があってこそ意味があるのだと、私は当時の自分に伝えたいのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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