本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
「自分の商売が上手くいく方法を知りたい」
これは実際に商売を始めた人の多くが望むものだと思います。
それでも飲食業を例にすると、開業後の10年で9割以上が廃業してしまうという事実から考えれば、上手くいく方法というのは探しても見つからなかった人がほとんどだと言えるのではないでしょうか?
では、なぜ多くの人が上手くいく方法を探しているにも関わらず、その答えが見つからないのかと考えると、それは他人の成功を真似しても再現が難しいという点があるのと同時に、そもそも上手くいく方法というもの自体が見つけられるものではないんじゃないか、とも思うのです。
「繁盛しているお店は、商売が上手くいく方法を知っているのだろう」
開業当初の私も、当時はこう考えていたような気がします。
ただ、これまで様々な開業オーナーさんと接してきた中で今思うのは、商売が上手くいく人とは「上手くいく方法を知っている」というよりも「上手くいかない方法を知っている」という方が近いのではないか、ということ。
というのも、実際に商売が上手くいっているお店を見ていても、決して同じことだけを続けているから上手くいっている訳ではなく、むしろ常に小さな変化を繰り返し、顧客のニーズに応え続けているから上手くいっているように見えるのです。
そして変化を続ける上では当然、新しい取り組みへのチャレンジが不可欠であり、そのチャレンジの過程において積み重ねてきた上手くいかない経験の蓄積こそが、そのお店の商売の精度を高めているように思えるのです。
「成功の再現は難しいけれど、失敗の再現は容易だ」というのが、これまで商売をしてきた私の実感ですが、商売が順調そうに見えるオーナーもまた、そんな自分が積み重ねてきた再現性の高い失敗経験を避けて新たな試行錯誤をしていくから、結果的に上手くいく確率も高くなっていくのではないでしょうか?
そう考えると、商売が上手くいく方法とはどこかで「見つけられるもの」ではなく、自らが積み重ねた失敗を避けて進み続けることで少しずつ「見えてくるもの」なのかも知れず、逆に言えば、失敗する経験を避けようとするあまり「必ず上手くいく方法を見つけよう」とすることこそが、廃業する9割に近づく選択なのかも知れないと、今は思うのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/