この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
「生産性の低い会社は、淘汰されていく」っていうのが、だんだん常識化してきましたね。
都心部はそうですが、地方はまだまだですよ。
これだけ騒がれているのに?
はい。
2〜3割は淘汰されるって、言われてますけど。地方では、まだ余裕があるってことですか?
余裕っていうよりも、経営者が「状況を分かってない」ってだけですね。
状況を分かってない?
たとえば「人が採れないですね」みたいな話になった時、「そうなの?」みたいな。
いまどき、そんな人いないでしょ!
いやいや。「うちはまだ本気を出してないから」みたいな。
本気出してない?プータローの言い訳じゃないんですから。
でも「採用にお金を出したことがない人」って、そういう感覚なんですよ。
そういう会社って黒字なんですか?
意外と黒字なんですよ。今のところは。
黒字だから危機感がないってことですか?
たとえば現場を持たない、営業マンだけの建設業ってあるじゃないですか。
入札だけして、よそに振ってるみたいな?
そういう業態でも「うちは、女性は駄目だ」とか、決めつけてたりしますね。
なぜ駄目なんですか?
男の世界だから。
新聞読まないんですか、そういう人って?20代の方がよっぽど危機感持ってますよ。
危機感持ってないです。ただ、逆に言うと、幸せですよね。
なにが幸せなんですか?
この人「何もやらなかったから、今生きてるんだな」って人がいるんですよ。
何もやらなかったから、生きてる?
チェレンジするのって、リスクもあるじゃないですか。
そりゃあ、当然ですよね。でもやるしかない。
じつは「何もしなかったがために生き残った」みたいな人って、一定数いるんですよ。
余計なことをしなかったから、生き残ってこれたと?
そういう発想なんでしょうね。次の10年は「ないな」と思いますけど。
「余計なことをしない癖」が、付いてるってことですか?
癖が付いてるとも言えるし、「余計なことしてないこと」に気付いてないとも言える。
たとえば、お金をかけて採用したことがないとか?
そうです。
縁故採用だけで、やってこれたと?そんな人いるんですか?今時。
います。
そういう会社って、集客とかマーケティングは、どうしてるんですか?
飲み会に行って、ガーって仲良くなって、物が売れちゃうみたいな。
そんな世界、まだあるんですか?
うちの地元、まだ結構あります。
なるほど。だから危機感がないと?
そうですね。象徴としては、スマホを持ってないこと。
スマホ持ってない。じゃあ、パソコンも持ってないんですか?
パソコン苦手ですね。
だって、パソコン使えるんだったら、スマホ使えますよね、普通。
スマホのほうが簡単ですからね。
そうですよね。ガラケーのほうが「かえって難しくないか?」って気がします。
基本的に、新しいものにチャレンジしないんですよ。
それでガラケーを使い続けていると?
ガラケー出てきた瞬間に、僕らも「営業するのやめとこう」みたいになります。
ひとつのバロメーターに、なってるってことですね。
そういう人は、人に対する考え方とか、全てがバージョンアップしてないんですよ。
人に対する考えって、たとえばどんな?
採用って、今はどっちかっていうと「来てもらう」って感覚じゃないですか。
はい。
でも「雇ってやってる」みたいな。
今時そんな人いるんですか?
います。
じゃ、社員さんにも、結構偉そうなんですか?
はい。「給料を払ってやってる」と思ってるから。
辞めちゃいませんか?社員さん。
辞めても「あいつらは、根性がなかった」とか、そういう感じですね。
でも、辞めたら困るでしょ?
じつは、そんなにやめないんですよ。
どうして辞めないんですか?
ひとつは、恐怖で追い込んでるから。
怖くて、辞めると言えない?
はい。それと、社員の方が勉強不足なケースもあります。
新聞読まないから、今の買い手市場を知らないと?
ローマの平和みたいな状態。外部を知らないから。
新聞読む暇がないほど、忙しいってことですか?
空いた時間に、新聞を読んだり勉強する人は稀じゃないですか?
なるほど。
あとは「お世話になってる」とか「雇ってもらってる」みたいな感覚が、まだ一部には残ってますね。
そんなに偉そうにされても?
はい。
じゃあ「ニッチな社員」と「ニッチな経営者」とで、最後の牙城を守ってる?
本当にそんな感じですよ。
社員さん、嫌にならないんですかね?
不思議なんですけど、社長から「死ね」とか「帰れ」とか言われても、帰らないんですよ。
ある意味、凄い洗脳ですね。
はい。
でも、今回の法律改正って、社員がオッケーと言っても、駄目なわけでしょ?
ダメです。労働時間も、有給休暇も。
そうですよね。だから、いずれそういう会社って、存在できなくなりますよね?
間違いないです。
順番は、どっちが先だと思います?社員が辞めるのが先か、それとも利益が上がらなくなるのが先か。
労働法で利益が出なくなって、企業が廃業した結果、社員が溢れ出てくる。それがこの法改正の狙いですから。
ギリギリまで、辞めないと?
やっぱり、周り見てても、マイホームを買う、子供を塾に行かせてる、もうこれ辞められない。
でも、辞めたって無職になるわけじゃないでしょ?転職したら逆に収入増えるかもしれませんよ。
奥さんからの圧がすごいんですよ。仕事がなくなることが、とにかく不安。
大企業だったら分かりますけど。中小企業でも「辞めないで」って奥さん、多いんですか?
日経新聞を読んでるわけじゃないし。閉ざされた空間の中でやってるので。
これからも奥さんが、新聞を読まないことを願うばかりですね
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。