第28回「レビューと広告はセット」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第28回「レビューと広告はセット」

安田

オープンワークっていう会社、知ってます?

久野

Vorkersですね。

安田

Vorkers?

久野

Vorkersが社名変更してオープンワークになったんですよ。確か。

安田

そうなんですか。実は六本木駅にものすごい広告が出てまして。「会社の全てをオープンにしよう」みたいな。

久野

今すごく仕掛けてますね。

安田

給料から、人間関係から、理不尽な命令から、全部言っちゃおうみたいな。あれは書き込みサイトなんですか?

久野

一応、転職サイトですよね。

安田

転職サイトですか。

久野

Glassdoorってあるじゃないですか。

安田

リクルートが買収した?

久野

はい。あそこも転職サイトなんですけど、情報開示がいま基本的な流れですね。

安田

最近よくありますよね。自社の情報も書かないと、他社の情報が見れないみたいな。

久野

転職会議なんかはそうですね。ログインするために、1回書かなきゃいけない。

安田

それは、どういう狙いなんですか。

久野

一応、建前は理念的なことですね。ガラス張りにして、会社のこと分かった状態で転職してもらうのが幸せだよねっていう。

安田

でも基本的には企業がお金を出すんですよね。

久野

そうですね。

安田

これまではスポンサーの良い情報を書いて、採用成功に繋げてた。これってその真逆じゃないですか。

久野

そういう流れなんですよ。

安田

みんなで企業の悪口言い出したら、どこにも行かなくなっちゃうじゃないですか。

久野

全部の口コミが悪いわけじゃないんですよ。

安田

いいことも書かれてる?

久野

いいことも若干書いてあります。2:8ぐらいのイメージ。

安田

いいことも悪いことも書いてあるから、より自分にぴったりの会社が分かるってことですか。

久野

そうですね。入った後にミスマッチが起こりにくい。あとは「悪く書かれないように企業努力しなさい」という社会のメッセージだと思いますね。

安田

なぜそういう流れになったんですか?

久野

求職者を集めるためにサイトも必死なので。そういう口コミって読みたくなるじゃないですか。

安田

企業の悪口も書かせたほうが、人が集まるってことですか?

久野

はい。宣伝広告を兼ねてますよね。

安田

でも企業の側からしたら「そんな会社に発注したくないぞ」ってならないんですか。

久野

いや当然なるでしょうね。

安田

じゃあ企業よりも求職者のほう見てるってことですかね。

久野

そうだと思います。企業を集めるよりも、求職者を集めるほうが大変なんですよ。

安田

なるほど。確かにあちこちで、そういう逆転現象が起きてますよね。

久野

物流もいま配送業者の方が強いじゃないですか。

安田

はい。仕事を取るよりドライバーを採る方が大変。

久野

求人サイトも、もうそっち寄りになってるんですよ。

安田

そこまで来ましたか。

久野

IndeedもGlassdoorとくっ付けるという話です。

安田

くっつける?

久野

Indeedで検索したら、企業の求人情報にレビューが付いてくるんです。

安田

働いていた人の?

久野

そう。仕事の食べログみたいな状態になっていく。

安田

じゃあ企業側が出した広告と、働いてた人のレビューが同時に見れて、その上で受けるかどうかを決めると。

久野

はい。だから「変な辞めさせ方をしない」っていうのがすごく大事。

安田

変なやめさせ方って、たとえば?

久野

揉めるってことですよね。たとえばセクハラとかパワハラとか。あと労働法違反みたいなものとかコンプライアンスが甘いとか。

安田

なるほど。揉めたら新規の採用にも直結すると。

久野

そういうことです。

安田

今までだったら「文句あるやつは辞めろ」「入れ替えりゃいい」って感じでしたけど。

久野

もうそういうのは通用しないです。

安田

現場ではどうアドバイスするんですか?社労士さんって企業から顧問料もらってる立場じゃないですか。

久野

はい。難しい立場ですけどはっきり言います。でないと採用できないので。

安田

でも働く側にも言い分あるでしょうけど、雇ってる側にも言いたいことはあるじゃないですか。「もうちょっとちゃんと働いてから文句言えよ」みたいな。

久野

そんなの、めちゃめちゃありますよ。私だって雇ってる立場ですからね。

安田

そうですよね。

久野

だから5年ぐらい前までは会社視点でずっとやってきたんですけど。それを今貫くと、結果として従業員いなくなっちゃったりするんで。

安田

背に腹は代えられないと。

久野

ただ、従業員に寄り過ぎると経営者から「いらない」って言われるので。ニュートラルを意識しながら、若干経営者寄りでアドバイスする。

安田

社労士さんも大変ですね。

久野

はい(笑)

安田

いずれにしても今後は、求人情報を見たらレビューがついてるのが普通になっちゃうと。

久野

普通になると思います。

安田

そうなったときに、レビューに悪口を書かれてる会社と、まったくレビューが書かれてない会社だったら、どっちが有利なんですか。

久野

全くレビューが書かれてないのも問題なんですよ。

安田

ですよね。だってレビュー0の本とか買う気しないじゃないですか。

久野

はい。レビュー満点の本もちょっと怪しいですし。

安田

ですよね。少しぐらい批判的なレビューもあった方が信憑性があります。

久野

極論、8割方否定的でも2割ぐらい「めっちゃ良かった」って人がいたら、それを見て買う人もいると思うんですよ。

安田

いや絶対いますよ。

久野

みんな結構レビューに慣れてきて「悪いレビューも一定数あるよね」っていうのが一般的。

安田

極端な悪口とかは、見てるほうも省きますよね。こいつ変なやつだなみたいな。

久野

その人のレビュー見ると、どれも全部低いとか。

安田

じゃあ企業が目指すべきは五つ星ではなく、バランスのいいレビューですね。

久野

はい。良すぎるレビューや悪すぎるレビューは弾かれるので。平均値を高めること。

安田

食べログ的に言うと何点ぐらいが狙い目ですか?

久野

難しい質問ですね。

安田

そこをズバッと。

久野

3.8ってとこじゃないでしょうか(笑)


久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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