第44回「せんせいのゆくへ」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第44回「せんせいのゆくへ」

安田

先生同士のイジメ問題、ずっと話題になってますよね。

久野

はいニュースになってますね。

安田

無理やりカレー食べさせたり。車のボンネットの上で暴れたり。聞けば聞くほどひどい話なんですけど。

久野

私もニュースで見ました。あれはひどいですね。

安田

ずっと謹慎中らしいんですけど。本人たちは自主退職を申し出てるみたいですね。

久野

そうなんですけど。退職届を受理すると懲戒処分ができなくなるので。これから懲罰委員会で審議するみたいです。

安田

「子どもたちに教える仕事からは外します」って言ってました。

久野

さすがに先生という仕事はもう続けられないでしょう。

安田

かなり大きな社会的制裁を受けることになりましたね。

久野

はい。軽いいじめのつもりだったんでしょうけど。

安田

ここまで問題が大きくなったら放置できないですもんね。

久野

そうですね。ただ公務員の服務規程が追いついてないんですよ。責任の取り方みたいところまで記されてなくて。

安田

今回は自分で依願退職を申し出たんですよね。

久野

はい。責任取って辞めますみたいな。

安田

だけどそれでは許されない?

久野

「こんなやつらに退職金を払うのか!」って住民が抗議してますから。

安田

そりゃあそうですよね。

久野

かなりの厳罰になると思います。

安田

今の時代って、こういうことすると本人の名前まで分かっちゃうじゃないですか。

久野

はい。もうネットでは写真まで晒されてます。

安田

普通の仕事に就くのも難しそうですよね。

久野

近所の人からもそういう目で見られますし。

安田

ある意味厳しい世の中ですよね。

久野

もうイジメとか割に合わないです。

安田

今後は公務員の規則も変わっていくでしょうか。

久野

そう思います。

安田

別の先生を雇うコストも市民が負担するわけですからね。

久野

そうなりますね。

安田

今の法律では懲戒解雇って難しいんですか?

久野

そうなんですよ。

安田

今回の事件は最終的にはどうなるんでしょうね。

久野

懲罰委員会の判断次第ですけど、かなり厳しい方向に行くと思います。

安田

自主的に辞めるってのは受け入れられない?

久野

じゃないですかね。

安田

これまでだったら依願退職になってたケースですけど。

久野

それが一番スムーズなので。

安田

警察官はよく依願退職になりますよね。

久野

はい。慣例みたいになってます。

安田

でも警官本人が「辞めません」って言ったら、解雇はできないんでしょ?

久野

そうですね。

安田

どうやって退職願いを出させるんでしょうね。

久野

組織風土みたいなのがあるんじゃないですか。「私たちは正義の番人です」みたいな。

安田

そんなこと言ったら先生だって、「私たちは子供達のお手本です」ってことになりませんか。

久野

今はそういう人は 少ないんじゃないですか。

安田

「安定してるから先生やってるだけ」みたいな。

久野

だんだんそうなって来てますよね。

安田

確かに。先生のなり手も減ってますし。どんどん質が下がってるらしいです。

久野

海上保安庁も定員割れしてましたよね。警官もいずれそうなるかもしれません。

安田

警官も質が下がってる気がしますよね。犯罪が増えてたり。

久野

はい。

安田

でも、そうなってくると怖いですよね。人間性みたいなところを求められる仕事なので。

久野

医者とか教師は学力測っただけでなっちゃいますから。

安田

そういう人にメスを持たすとか恐ろしいです。

久野

特に公務員は解雇する手続きが相当難しいんですよ。

安田

これを機に法律が改正されないでしょうか。医者や教師は人間性をきちんと確かめるように。

久野

国のルールを考えてるのは公務員ですからね。

安田

確かに。

久野

自分で自分に厳しくするのは難しいと思います。

安田

じゃあ官僚の人たちは今回のようなケースでも、いじめた先生の味方なんですか?

久野

いやいや、一緒にして欲しくないって思ってますよ、絶対。

安田

ですよね。

久野

はい。同じ教師の人たちだって「早く辞めてほしい」と思ってるんじゃないですか。

安田

一緒にされたくないと。

久野

はい。

安田

でも制度は変えないでほしい?

久野

身分の保障はちゃんとしてほしい。でも悪いことした人は「自分で身を引くべきじゃないか」と思ってる。

安田

制度はいじらず自主的に辞めて行くのが理想だと。

久野

まともな人はあんなことやらないですもん。

安田

そりゃそうですよね。ほとんどの人はちゃんとしてるわけで。

久野

はい。でもあんな先生がいると自分たちの信用まで失うので。

安田

でも今の時代、あそこまでいったら相当厳しいことになりますよ。

久野

でしょうね。ずっと残りますからね。ネットとか調べたら出てくる。

安田

「あの人、今〇〇町に住んでるらしいよ」って、絶対ネットに書かれますよ。

久野

間違いなく書かれますね。

安田

ここまで大ごとになるとは思ってなかったんでしょうね。

久野

動画が出てたじゃないですか。

安田

いじめてる動画ですか?

久野

はい。ああいうのが出てくる時点で、もう認識がすごく薄いんでしょう。

安田

確かに。自分たちで映像撮ってましたもんね。

久野

再起が難しいってことも認識できてないかもしれないです。

安田

そんな人が先生やってるってことですよね。

久野

はい。そこが一番恐ろしいです。


久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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