この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
去年の 10月時点で、倒産件数が過去最高になったそうです。
はい。データが出てましたね。
原因のひとつは人手不足倒産。後継者がいないとか。
それも多いですけど、基本的には人件費が払えない会社。これからさらに増えていきますよ。
久野さん、よく言ってますよね。政府が倒産をある意味増やそうとしてるって。
そう思います。増やそうとしてる。
それはなぜですか?
人口が増えてるタイミングでは、会社って必ず増えてかなきゃいけないんですよ。
それは働き口を増やすため?
はい。受け皿が少ないから。たとえばアメリカでは、雇用が増えるビジネスじゃないと外国人にビザをくれないでしょ?
そうなんですか?
ただ金稼ぎに来るだけの人はNGです。日本人がアメリカで寿司屋をやるのは、雇用が生まれるのでビザが取りやすい。
なるほど。
アメリカは人口が増えてますから。経済が伸びてる段階では「会社を増やすこと」が国家戦略として正しい。
日本は違うと。
日本は人口減少期なので、会社を絞って「儲かる会社だけ」を残すことが国家戦略。競争させて国民の所得を増やしていく。
テレビでは「100年以上続く日本の会社」みたいなのを、すごく自慢気にやってますけど。
これまでは人口が増えてましたから。
じゃあ今後は「長くて、なおかつ収益が出てる会社」じゃないと評価されない?
そうなるでしょうね。
四代目、五代目で、資産を切り崩してやってる会社なんかは、もうダメだと。
そういう会社はもう守ってくれない。
せっかく100年以上続いてきた会社でも、国からすれば「別につぶれてくれてもいい」って感じですか。
そう思います。
100年も続いてる会社って、銀行や国が守ってくれそうなイメージですけど。
それは間違いですね。
日本の宝みたいにテレビでは言ってましたよ。
「うちがつぶれたら大変なことになる」と思ってる経営者も多いです。
じっさい困る人はいないんですか?
ビジネスモデルが終わってる会社は。なくなっても誰も困らないです。
確かに「よくこれで続いてるな」ってビジネスもあります。
こだわってるのは経営者だけです。お金がなくならないうちにやめたほうがいいと思う。
じゃあ倒産件数は今後さらに増えていくと。
間違いなく増えていくと思います。
生き残るのは儲かってる会社だけですか?
ダーウィンが言うように「変化するもの」だけが生き残る。変化しながら100年やってきた会社はこれからも残っていきますよ。
ほとんど変わってない会社もたくさんあります。
変わってない会社の方が多いです。
劣化していってる会社もありますよね。
もう「風前の灯」みたいな会社がたくさんあります。
じゃあ、これから一気に退場が始まると。100年以上続く会社もどんどんなくなっていく?
もう昔のように銀行にも余裕がないので。政府も支援しない方向だと思いますし。
資産がある老舗企業だったら、いいんですけどね。すごいお金を貯め込んでるとか。
資産のあるところが今まで勝ってきたんですよ。先祖代々の土地があるから安くできるよねって。だけど、もうそれだけじゃ勝ち残れない世の中になってきてる。
確かにそうですね。
戦いの種類がちょっと変わってきてますから。地上戦だったのに、いきなり空から商品が降ってくる感じ。
アメリカは時価総額トップの企業がGAFAに入れ替わっちゃいましたもんね。日本はほとんど変わらないですけど。
変わってないから危ないんです。
上が居座ってるから生産性が上がらないと。いずれは大手も国から見捨てられるんでしょうか?
生産性が低いままだと大いにあり得る。
最近、給料が高い会社とか低い会社とか、よく発表されるじゃないですか。
新聞に出てましたね。上場企業で年収が低いランキング。1位が200万円代でびっくりしました。
年収が低い上場企業を発表するって、「もう前ら退場しろ」っていうメッセージでしょうか。
あんなの出したら、絶対に人が来なくなりますから。
中にいる社員も微妙ですよね。「俺たち都内で一番下かよ」みたいな。
昔はブランドだけで入社する人もいましたけど。「上場企業に勤めたら大丈夫」みたいな。
上場企業で200万円代は驚きですね。
もう現実的にビジネスモデルが成り立ってないんですよ。
上位を発表するっていうのは昔からありましたけど。下位を発表するって、何かすごく意図を感じますよね。
もちろん意図があって発表してるんです。
報酬が安い企業への警告みたいな。
私はものすごい圧力を感じます。
逆に「1人当たりの収益が高い会社」は、小さくても国がサポートしてくれる?
そうするべきなんでしょうけど。実際にはサポートできてないです。
そういうところが的外れなんですよ。国がやることって。
ですね。回さないといけないところに資金が回ってない。
どうでもいいようなトコにばかり回しますから。
選挙対策が先に来るので。
まさに政治家って「生産性が低い人たち」の代表ですよ。既得権だけで食べてきた人たち。
一度掴んだ権力や既得権は絶対に手放さないですから。
そんな人たちが改革できんのなかって疑問に思います。
無理でしょうね。社労士業界を見ていても感じます。
それはどのような?
たとえばマイナンバーを使って全自動にしたら、社労士事務所なんていらなくなるんですよ。
そんなことになったら久野さんは大変じゃないですか。
大変ですけど、本来はそうならないといけないんです。でもそうはならない。
それは票が絡んでるからですか?
その通りです。若者の投票率だってネット投票を導入したら一気に上がる。でも絶対にやらない。年寄りだけに投票させといたほうが勝てるから。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。