1回目の緊急事態宣言と比べて「危機感が足りない」と言われてます。
外食を控える人は減ってますけどね。
リモートワークがぜんぜん増えてないみたいです。
7割目標なのに2割ぐらいしか実現してないですから。
どうして増えないんですか。
従業員からは「仕事に集中できる」「生産性が上がる」「通勤がなくなるので効率がいい」って評判がいいです。
社員には人気ありますよね。
はい。導入することで採用力も上がります。ただ管理側は「対面じゃなきゃ駄目だ」って人がまだまだ多い。
経営者も反対する人が多いんですか。
とくに営業面での反対が多いですね。今までずっと対面でやってきたので。
変える決断ができないと。
本当は新しい売り方を考えなきゃいけないんですけど。「いったん前のかたちに戻そう」となっちゃってます。
それは中小企業の話ですよね。
いや大企業も含めて。
大企業も?対面じゃなきゃだめだと。
たとえば大手の保険会社とか。売れなくなってしまうという危機感があって。
リモートでは売れないですか。
そもそもリモートで売ろうとしてないです。会社の方針として。
リアルに会いにいけってことですか。
今まで誠心誠意とか言ってた業界じゃないですか。それがリモートで伝わるのかっていう。
会えば伝わるってもんじゃないですよ。誠意というのは。
そうですよね。
どちらかというと有難迷惑ですけどね。保険の営業って。
(笑)
使いもしないカレンダーを送ってきたり。それを誠意だとか言われても。
厳しいですね。
「本当に必要な提案をしてくれる」とか「いざという時すぐ連絡くれる」とか。それが誠意ですよ。自腹切ってのカレンダーとかプレゼントとかいらない。
まあそうなんですよね。
買う側からしたらリモートでもまったく問題なし。
リモートの方が絶対いいですよ、断りやすいし。
でも「断りやすい」ってことは「断られやすい」ってことですからね。
冷静に考えて決められます。商品そのものにも向き合えるし。
断りにくいから「つい入っちゃう」っていう売り方、そろそろやめた方がいいですよ。
商品力というより人間関係で売ってますからね。
もっと商品自体を工夫すればいいのに。
工夫してるけど、アマチュアには分からない世界でやってます。
意味ないですね(笑)ちなみに保険以外でもリモートが無理な業界ってありますか。
製造現場を持ってるところは無理ですね。
そこは仕方ないですよ。
無人化するしかないですね。
でも国として7割を掲げるってことは、それが可能だってことですよね。いくらなんでも根拠はあるんでしょうから。
7割って掲げとけば「5割ぐらいいくだろう」と思ってるんですよ。
そんなにいい加減な数字なんですか。
5割すら届いてませんけど。
やりたいけどできないのか。できるんだけどやりたくないのか。どっちなんですかね。
経営者は「うちの仕事はできない」って言いますね。
そこを工夫しないと。
はい。コロナ前の環境には絶対戻らないですから。それ考えるのが仕事だと思うんですけど。
なぜ考えないんですかね。
そもそもやる気がないんだと思います。
社長なのにやる気がないんですか。
変える気がないってことです。社員の安全を考えたら変えなきゃいけない。でも変わることにものすごい抵抗がある。
なぜそんなに抵抗があるんですかね。
来た仕事をこなしてるだけの人たちなので。新しい売り方を考えるとか、そういうことは一切やってこなかった。
発想は社員と同じですね。
単にリモートに置き換えても「前の方が良かったね」って話になります。新しい価値を見つけるという発想がないから。
大企業も意外と遅れてますよね。進んでるように見えて。
大企業は意思決定がものすごく遅いので。ツールの選定に6カ月かかかったり。
6カ月もかかるんですか。
そんなの普通ですよ。忘れた頃に連絡が入るんです。
半年も経ったら環境そのものが変っちゃいますよ。
そうなんですよ。「いつの見積もりですか、これ?」みたいな。
リモートへの切り替えもそんな感じですか。
部署が分かれてるのでその調整だけで大変です。リモートに置き換える決定をしても「その議事録は紙にするのかどうか」とか。いちいち許可を取らなきゃいけない。
意思決定の遅さが「世界で生き残れない原因だ」って言われてますよ。
本人たちもそこは理解してるんです。
理解してても危機感がないと。
危機感はあるんです。ただじっさい動き出すまでにすごく時間がかかる。「リモートを始めましょう」というセミナーにようやく来だした感じ。
やっとそこですか。やっぱり経営層がやりたくないんでしょうか。
管理層の意見としては「マネジメントがきかない」とか「教育の仕方が分からない」とか。いろんな言い訳を付けてやめてますね。
今後「限りなく100%に近い会社」と「まったく導入してない会社」に分かれていくでしょうね。
はい。それが採用や業績に影響してくると思います。とくに若い人たちはリモートワークを重視してますから。
学生さんは「リモート授業」が嫌みたいですよ。「早くリアルにしてくれ」って。なんか矛盾を感じますけど。
授業はリアルでやってほしいけど、働くときには行きたくないってことでしょう。
どうしてそうなるんですか。
仕事は合理的にやりたいんですよ。でも遊びにはやっぱり無駄がいるんです。合理的だと楽しくないので。
仕事に楽しさは求めてないってことですか。
そういうことですね。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。