逆転する評価ポジション

チャットGPTを運営するOpen AI社の社長が取締役会で解任された。それに納得がいかない社員は「社長を戻さないなら自分たちも辞める」と取締役会に訴えた。ほとんどの社員が辞めると言い出したため、取締役会は社長を戻さざるを得なくなった。この会社の最高権力者は誰なのだろうか。

これを「遠い外国の特殊な会社の話」だと捉えるのか。それとも「明日は我が身」だと捉えるのか。その判断によって会社の未来は大きく変わる。若くて優秀な社員にはいくらでも選択肢がある。もっと報酬のいい会社に移ることも、もっと成長できる会社に移ることも、もっと自分の意見が反映される会社に移ることも、可能なのだ。

若くて優秀な人材はどこの会社も欲しい。なぜなら彼らは会社に利益をもたらしてくれるから。そんなに優秀な人材など滅多にいない。そうたかを括っている経営者は冷静に考えてみてほしい。優秀な人材とはどのような人材なのかということを。会社にとって優秀か優秀でないか。その境目は利益である。つまり黒字社員は全員優秀なのである。

彼らには選択権がある。嫌なら辞めればいい。他の会社に移ればいい。選択権がないのは赤字社員だ。利益に貢献できない社員に会社は冷たい。残業やパワハラで揉めるのは決まってこのゾーンの人材である。なぜなら彼らには辞めるという選択肢がないから。我慢し続けるしかないから開き直って「訴える」という手段に出るのである。

優秀な人材はこんな面倒なことは考えない。納得がいかなければ辞めて他に移ればいいだけの話。優秀な人材を繋ぎ止めたいなら現実を受け入れるべきだ。もはや経営側に選択肢はないのだと。チヤホヤしろと言っているのではない。優秀な人材はそんなことを求めていない。求めているのは社長の能力と本気さ。そして、まともな待遇とスキルアップできる環境である。

社長は常に見られている。この人は本気なのか。この人には能力があるのか。ということを。評価するのは社長ではなく社員の側なのである。そんなバカなことがあるか。社長が社員を評価するのが会社だろう。そう考えるなら優秀な人材の確保は諦めることだ。そんな環境で働き続けるのは赤字社員だけ。なぜなら彼らには選択肢がないから。評価する側ではなく評価される側。それが優秀な人材を抱える経営者のポジションなのである。

 

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