第109回 仕事に求めるものの違い

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第109回「仕事に求めるものの違い


安田

1回目の緊急事態宣言と比べて「危機感が足りない」と言われてます。

久野

外食を控える人は減ってますけどね。

安田

リモートワークがぜんぜん増えてないみたいです。

久野

7割目標なのに2割ぐらいしか実現してないですから。

安田

どうして増えないんですか。

久野

従業員からは「仕事に集中できる」「生産性が上がる」「通勤がなくなるので効率がいい」って評判がいいです。

安田

社員には人気ありますよね。

久野

はい。導入することで採用力も上がります。ただ管理側は「対面じゃなきゃ駄目だ」って人がまだまだ多い。

安田

経営者も反対する人が多いんですか。

久野

とくに営業面での反対が多いですね。今までずっと対面でやってきたので。

安田

変える決断ができないと。

久野

本当は新しい売り方を考えなきゃいけないんですけど。「いったん前のかたちに戻そう」となっちゃってます。

安田

それは中小企業の話ですよね。

久野

いや大企業も含めて。

安田

大企業も?対面じゃなきゃだめだと。

久野

たとえば大手の保険会社とか。売れなくなってしまうという危機感があって。

安田

リモートでは売れないですか。

久野

そもそもリモートで売ろうとしてないです。会社の方針として。

安田

リアルに会いにいけってことですか。

久野

今まで誠心誠意とか言ってた業界じゃないですか。それがリモートで伝わるのかっていう。

安田

会えば伝わるってもんじゃないですよ。誠意というのは。

久野

そうですよね。

安田

どちらかというと有難迷惑ですけどね。保険の営業って。

久野

(笑)

安田

使いもしないカレンダーを送ってきたり。それを誠意だとか言われても。

久野

厳しいですね。

安田

「本当に必要な提案をしてくれる」とか「いざという時すぐ連絡くれる」とか。それが誠意ですよ。自腹切ってのカレンダーとかプレゼントとかいらない。

久野

まあそうなんですよね。

安田

買う側からしたらリモートでもまったく問題なし。

久野

リモートの方が絶対いいですよ、断りやすいし。

安田

でも「断りやすい」ってことは「断られやすい」ってことですからね。

久野

冷静に考えて決められます。商品そのものにも向き合えるし。

安田

断りにくいから「つい入っちゃう」っていう売り方、そろそろやめた方がいいですよ。

久野

商品力というより人間関係で売ってますからね。

安田

もっと商品自体を工夫すればいいのに。

久野

工夫してるけど、アマチュアには分からない世界でやってます。

安田

意味ないですね(笑)ちなみに保険以外でもリモートが無理な業界ってありますか。

久野

製造現場を持ってるところは無理ですね。

安田

そこは仕方ないですよ。

久野

無人化するしかないですね。

安田

でも国として7割を掲げるってことは、それが可能だってことですよね。いくらなんでも根拠はあるんでしょうから。

久野

7割って掲げとけば「5割ぐらいいくだろう」と思ってるんですよ。

安田

そんなにいい加減な数字なんですか。

久野

5割すら届いてませんけど。

安田

やりたいけどできないのか。できるんだけどやりたくないのか。どっちなんですかね。

久野

経営者は「うちの仕事はできない」って言いますね。

安田

そこを工夫しないと。

久野

はい。コロナ前の環境には絶対戻らないですから。それ考えるのが仕事だと思うんですけど。

安田

なぜ考えないんですかね。

久野

そもそもやる気がないんだと思います。

安田

社長なのにやる気がないんですか。

久野

変える気がないってことです。社員の安全を考えたら変えなきゃいけない。でも変わることにものすごい抵抗がある。

安田

なぜそんなに抵抗があるんですかね。

久野

来た仕事をこなしてるだけの人たちなので。新しい売り方を考えるとか、そういうことは一切やってこなかった。

安田

発想は社員と同じですね。

久野

単にリモートに置き換えても「前の方が良かったね」って話になります。新しい価値を見つけるという発想がないから。

安田

大企業も意外と遅れてますよね。進んでるように見えて。

久野

大企業は意思決定がものすごく遅いので。ツールの選定に6カ月かかかったり。

安田

6カ月もかかるんですか。

久野

そんなの普通ですよ。忘れた頃に連絡が入るんです。

安田

半年も経ったら環境そのものが変っちゃいますよ。

久野

そうなんですよ。「いつの見積もりですか、これ?」みたいな。

安田

リモートへの切り替えもそんな感じですか。

久野

部署が分かれてるのでその調整だけで大変です。リモートに置き換える決定をしても「その議事録は紙にするのかどうか」とか。いちいち許可を取らなきゃいけない。

安田

意思決定の遅さが「世界で生き残れない原因だ」って言われてますよ。

久野

本人たちもそこは理解してるんです。

安田

理解してても危機感がないと。

久野

危機感はあるんです。ただじっさい動き出すまでにすごく時間がかかる。「リモートを始めましょう」というセミナーにようやく来だした感じ。

安田

やっとそこですか。やっぱり経営層がやりたくないんでしょうか。

久野

管理層の意見としては「マネジメントがきかない」とか「教育の仕方が分からない」とか。いろんな言い訳を付けてやめてますね。

安田

今後「限りなく100%に近い会社」と「まったく導入してない会社」に分かれていくでしょうね。

久野

はい。それが採用や業績に影響してくると思います。とくに若い人たちはリモートワークを重視してますから。

安田

学生さんは「リモート授業」が嫌みたいですよ。「早くリアルにしてくれ」って。なんか矛盾を感じますけど。

久野

授業はリアルでやってほしいけど、働くときには行きたくないってことでしょう。

安田

どうしてそうなるんですか。

久野

仕事は合理的にやりたいんですよ。でも遊びにはやっぱり無駄がいるんです。合理的だと楽しくないので。

安田

仕事に楽しさは求めてないってことですか。

久野

そういうことですね。

 

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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