厚労省の職員が銀座で送別会をやって。事件になりましたね。
23人で深夜まで飲食してたみたいです。
本来はコロナを止めなくちゃいけない部門の人たちで。しかも遅くまで開いてる店を探して行ったらしいですから。確信犯ですね。
「残業が終わってからチラホラ集まり始めた」って書いてありました。
なかなか一般人には理解しがたいです。見つかったらどうなるか容易に想像がつくことですし、もし感染してたら大変なことになる。
そうですよね。
どういう感覚でこんなことをやったんでしょう。
厚労省の内情までは分からないです(笑)
仕事がら厚労省とは関係が深いのかと(笑)
確かに。厚労省からお仕事をいただいてるような立場ですね。
これって、いわゆる「組織文化」でしょうか。本人たちにも悪気がないっていう。
そういう部分はあると思います。
国民には「自粛しろ」と言いながら、自分たちには甘い。
厚生労働省って、省庁の中でもひときわでかい組織なんですよ。
そうなんですか。
はい。予算の規模が圧倒的に大きい。人数も多いので、隅々まで組織のカルチャーとかは伝わっていないのかもしれません。
でも各部門にリーダーがいるわけですよね。
はい。
だったら「感染したらどうするんだ」って、中止させそうなもんですけど。
普通はそうですよね。
そういうことを言い出せない空気があるとか。
「どうせわからないだろ」ってのが、あったんですかね?
甘いですね。今どきどこで誰が見てるか分からないのに。
ですね。
23人もいて誰も「やめましょう」とは言わなかった。
たとえば上司がマスク外した瞬間に、部下って考えるわけですよ。食べるときだけマスク外せばいいのか、それともずっと外したほうがいいのか。
どういう意味ですか。
忖度みたいなのが働くわけです。「これはマスクを外す流れだな」とか。
そんなことにまで忖度するんですか?
そう思います。どこの会社でもあると思いますが。
だったら飲み会なんて断れないですね。
無理でしょう。
ついていった人の中には「ほらみろ」と思ってる人もいるでしょうね。
「ほらみろ」じゃ済まないですよ。いろんなものを失ってるわけで。
だけど断れない。
「行くリスクよりも、行かないリスクのほうが高い」って考えたのかもしれません。
行かないリスクですか。
はい。上の方にはそれぐらい力があるから。
つまり官僚は国民ではなく「上司の顔色を見て」仕事してると。
スタンスではなく力関係の話です。たとえば中小企業の社長が「飲み会やるぞ」って言っても、23人は集まらないです。この時代。
官僚の世界って会社以上の上下関係があるんですね。
そう思います。
会社だったら、すぐに誰かが内部告発しますよ。
「うちの社長がこんなこと言ってます」とかSNSに書かれて。
官僚さんには「これやったらまずい」という自覚はないんですか。
いえ指針が出てますから。「これはまずい」とは思ってるはず。
ですよね。
しかも厚労省ですし。世の中に発信している側なので。
わざとやったってことはないですか?「コロナは大したことない」というメッセージ。経済にかじを切るために。
裏読みしすぎだと思います(笑)
じゃあ単に迂闊だっただけ?
国会議員もちょっと前にやらかしましたよね。夜の銀座で。
あれは特権意識の表れですよ。
そういうのもあるでしょうね。
テレビでパフォーマンスしてるでしょ。自分はマスクしながらでも食事できるって。
はい。
絶対に食事中マスクなんてつけてませんよ。「俺たちは特別だ」って思ってますから。
確かに。
自粛はもう限界じゃないですか。厚労省の職員までこうなっちゃうってことは。
彼らの場合は “風圧”が効かなくなるのが怖いんですよ。
風圧?
マネジメント現場での風圧ですね。リモートでは上下関係をつくるのが難しいから。
じゃあ風圧を取り戻すための食事?
食事に行って関係性をつくるという文化があるんです。「同じ釜の飯を食う」みたいな。
ちょっと古くないですか。
政治や官僚の世界では、いまだにそういう意識が強いんだと思いますよ。
へえ。
だからリアルな飲み食いの場が必要なんだと思う。
上が威厳を保つために?
上意下達が重要な組織なんですよ。そこが崩れちゃうと命令系統が機能しなくなる。
上司も言ってしまえばサラリーマンですからね。
そうなんですよ。だから絶妙な上下関係をつくらなきゃいけない。
じゃあ今回の会食は上司が首謀者ですか。
江戸時代の血判って丸く署名したじゃないですか。
血判?
誰が首謀者か分からないように、丸く署名していくんですよ。横書きだといちばん右の人が偉くなるじゃないですか。
なるほど。発起人が分からないように。
今回も「誰が首謀者か」わからないようになってるはず。
本人たちにも分からないんですか?
分からないようにやってると思います。
なぜそこまで忖度するんですか。
官僚組織ってみんな優秀なので差がつきづらいんですよ。最後は忖度してる人が出世するんです。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。