第14回 「経営者」とは社員に助けてもらうべき存在

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第14回 「経営者」とは社員に助けてもらうべき存在

安田

今回は「社員」と「経営者」の違いについてお話がしたいなと思っています。中辻さんは経営者になって6年目ですよね?


中辻

そうですね。私が運営している株式会社MAMENOKI COMPANYがいま6期目ですので。

安田

MAMENOKIができる前は、別のグループ会社のイチ社員だったわけでじゃないですか。そこから「経営者」になるにあたり何か意識したことはありますか?


中辻

う〜ん、仕事に関しての考え方であれば、正直、あまり変わってないですね(笑)。

安田

ええ!? そうなんですか(笑)。普通ならいろいろ考えそうなものですけど。


中辻

今思い返せば、そもそも社員時代から社長の目指している方向とか経営の仕方に共感してたんですよね。もともと社長を支えていきたい、という思いで働いていたので、逆に変える必要がなかったというか。

安田

それってすごいことですよ。雇われている身でありながら、社長と同じような視点で仕事をしてたってことでしょう?


中辻

そうなんですかね、私にとってはそれが当たり前のことだったんですけど(笑)。あ、でも、周りの人との接し方は経営をするようになって大きく変わったかもしれません。

安田

周りの人って、たとえば一緒に働く社員さんとかですか?


中辻

そうです。というのも、自分も社員だった頃は、他の社員は「ライバル」だったんです。私は自己顕示欲の強いタイプで、常に1番の成績でありたいから、周りに対しても競争意識むき出しでした(笑)。

安田

ああ、敵が多くなっちゃうタイプですね(笑)。でもそれが経営者になってからどう変わったんですか?純粋に応援できるようになったとか?


中辻

う〜ん、私が応援するというよりは、社員のみんなに助けてもらっている、という感覚です。

安田

へえ、そうなんですか。それまでと180度変わったように思えますけど(笑)。


中辻

笑。もちろん全体の舵取りは私がやっています。でも実際に手を動かしてくれるのは現場の社員なわけで。そう考えれば私たちの関係は「ライバル」じゃなく、同じ船に乗った仲間なんですよね。

安田

確かに経営者と社員は「ライバル」ではないですもんね。ちなみにその意識の変化は、意識的なものだったんですか?つまり、そう考えるように自らを変えたというか。


中辻

そういう部分もあります。「社員のみんなに助けてもらえるような人間でいなきゃ」と、日々努力していますね(笑)。そのためにも、会社のビジョンや目標はみんなにもしっかり共有し、協力を仰いでます。

安田

経営者とは社員に助けてもらってようやくやっていける仕事だ、という実感があるわけですね。まあ確かに、社員だったら自分のことだけ考えれていればいいですもんね(笑)。


中辻

私も社員時代は「自分が仕事ができればいい」「自分が1番であればいい」って考えでしたけど、経営をする立場になって完全に変わりましたね。一方で、経営者が社員より偉いとも思っていません。役割が違うだけというか、私は「舵を取る」役目を担っているに過ぎないと。

安田

経営者として素晴らしい考え方ですね。ちなみにお客さんに対してはどうですか?考え方は変わったんでしょうか。


中辻

社員時代とはやっぱりお客様との距離感も変わりました。商談をしたり、事業の相談を受けたり、密に接することができるのが純粋に嬉しいし楽しいし、そしてありがたいです。

安田

つまり社員時代よりお客さんとも近くなり、感謝の気持ちが強くなったと。


中辻

ええ、そうですね。この感覚は経営者になってみないとわからないのかもしれません。それこそ、いくら仕事ができて目立っている営業マンであっても、社員という立場にいる以上は味わえない感覚じゃないかな。

安田

確かに。お客さんからしても、イチ営業マンに話すことと、経営者である中辻さんに話すことは違うでしょうしね。経営者同士だからこそ話せることがある。


中辻

まさにその通りですね。

安田

ところで最近は、「出世して稼ぎたい!」って人より、「そこそこの給料で無理せず働きたい」っていう人が増えているそうなんですけれど。社員時代の中辻さんはどうでした? もう給料分働いたからこれ以上働いたら損する! なんて思ったことはありました?


中辻

それは思ったことないですね(笑)。

安田

やっぱりそうですか(笑)。


中辻

そもそも給料って、本来であれば相応の仕事をしないと手にできないお金じゃないですか。

安田

ええ。仕事に対する「対価」ですからね。


中辻

私はお給料って「自分の仕事が認められた価値」だと思っていて。その額が多ければ多いほど、自分が会社の力になっていると思えたんです。だから私はどんどんお金を稼ぎたかったですね。

安田

でもそうやって一生懸命頑張って、給料の3倍分くらい会社に貢献しているのに、全然給料があがらなかったらどうですか? 「もうこんな会社辞めてやる!」と思っちゃいますかね?


中辻

どうなんでしょう…。私、たぶんすごく恵まれていたのか、今までそういう思いをしたことが本当にないんですよ。基本的にいつも良くしてもらっていたし、額面でも十分にいただけていましたから。

安田

会社に搾取されている、なんて考えたことなかったですか?(笑)


中辻

ないですねえ(笑)。そもそも、中学もろくにいっていないバツイチ子持ちの私を拾ってくれて、良くしてくれて、大卒の人たちと一緒に働かせてくれている。それ自体がありがたいなってずっと思っていましたね。

安田

ああ、なるほど。中辻さんのそういう珍しい経歴が、結果的にはすごく良いスタンスを築いてくれたんでしょうね。


中辻

そうなんですかね?(笑) 学歴がない分、素直に仕事ができたのは良かったかもしれません。「わからない」が当たり前だったから、全く恥ずかしがることなく質問したりして。ある意味誰よりものびのびと仕事を続けてこれたというか。

安田

なるほど。そういう謙虚な姿勢で仕事に向き合ってきたからこそ、きっと今、ここまで立派な経営者になられたんでしょうね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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