第34回 発酵と腐敗の境目

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第34回 発酵と腐敗の境目

安田
私、常々不思議に思っていることがありまして。それが「発酵」と「腐敗」の違いなんです。たとえば、チーズはそもそも発酵しているものなのに、腐敗したチーズは食べられないってどういうことなのかなと。発酵と腐敗の境目はどこにあるんでしょうか?

久保
ああ、なるほど。確かにわかりづらいですよね。でも、実はその2つ、起きている現象としては全く同じなんですよ。
安田
え、そうなんですか?

久保
はい。細菌が食物の分子を細かくしていくという現象自体は、発酵も腐敗も全く同じ。「分解されていく作用」のうち、人間にとって有用なものを「発酵」、害になるものを「腐敗」と呼び分けているだけなんです。
安田
へぇ〜、そうなんですね。ということは、「発酵と腐敗の境目」は人間が決めているということになりますね。

久保
ええ、そうなりますね。つまり、他の動物から見ればその境目は違ってくるのかもしれない。
安田
なるほど、おもしろい(笑)。確かにハエなんかは、人間から見れば腐っているものでも喜んで食べていますもんね(笑)。

久保
そうですよね(笑)。ちなみに私が発酵についてお伝えする時によくする話があって。それが自然農法有機農法慣行農法(化学肥料や農薬を使う農法)、それぞれで作られたお米を、水の入った瓶に入れ1~2ヶ月放置するとどうなるか、というものなんですけど。
安田
ほぉ。なんとなく化学肥料で育てられたお米は「腐敗」していそうなイメージですが……。

久保
さすが、仰る通りです。化学肥料で育てたお米は、瓶の中で腐敗して、ケミカル臭のようなものがするそうです。では次に、有機農法のお米の場合はどうですか?
安田
有機農法なら、農薬も化学肥料も使っていないはずなので大丈夫なんじゃないですか?

久保
それが、肥料に動物の糞などを使っているからなのか、お米は腐敗し、動物の糞尿のような臭いがするんですって。
安田
へぇ〜、そうなんですか。では自然農法のお米はどうなるんですか?

久保
自然農法の場合、瓶の蓋を開けると甘酒のような麹のような匂いがする、つまり「発酵」しているんだそうです。
安田
なるほどなぁ。同じお米でも、育てられる農法によって腐敗したり発酵したりするわけなんですね。

久保
そういうことです。
安田
ところで今のお話だと、腐敗か発酵かは、においの良し悪しで判断できるということなんですか? いいにおいなら発酵で、嫌なにおいなら腐敗だという。

久保
うーん、その判断はちょっと難しいかもしれません。だって、納豆はどうなるの? ってなりませんか(笑)。
安田
ああ、確かに(笑)。納豆を「いい匂い」と感じる人はあまりいない気がしますが、あれは腐敗ではなく発酵ですもんね。うーん、そうなると謎は深まります。今でこそ化学検査などでチェックできますけど、はるか昔の人間は、どうやって発酵と腐敗の区別をしてきたんでしょう。

久保
経験則だったんじゃないでしょうか。私たちの祖先が、食べても大丈夫かどうか身をもって確かめていき、その結果を後世に伝えていった。その伝達の中で「こういうにおいがしたら大丈夫」というようなノウハウも共有されるようになったんじゃないですかね。
安田
なるほど。それこそ命懸けで、発酵と腐敗の境目を見つけてきてくれたと(笑)。ところで私、発酵食品は体に良いというイメージがあるんですが、それは合っていますか?

久保
ええ、そうですね。基本的に発酵食品は消化吸収に優しい食べ物です。というより、発酵の働きが消化吸収を助けてくれる。結果、すごくスムーズかつ効率的に細胞に栄養を届けられるというわけです。例えば以前「遅延型アレルギー」のお話をしたことがありましたよね。
安田
はい。遅れて反応がやってくる、厄介なアレルギーのことですよね。

久保
ええ。たとえば牛乳で遅延型のアレルギーが出る方でも、発酵食品であるチーズやヨーグルトなら全然問題なかったりするんです。
安田
ああ、まさに私がそうです! 牛乳はお腹が痛くなってしまうんですが、ヨーグルトやチーズでは全然そんなことなくて。

久保
そうでしたか! それは発酵することによって乳糖やタンパク質が小さく分解され、無毒化しているからなんです。もちろん個人差はありますが、安田さんのように「発酵すれば大丈夫」という方は結構いらっしゃるんですよ。
安田
へぇ〜、おもしろい。発酵することで消化吸収を助けるだけでなく、毒性もなくしてくれるなんて。「発酵」ってすごいんですねぇ。

久保
仰る通りです。とりわけ日本人はその「発酵技術」をとても上手に使ってきた民族ですね。大豆もそうです。実は「大豆が体に合わない人」って割と多いんですが……。
安田
ああ、大豆アレルギーの人が多いって、よく聞きます。

久保
ええ。でもその大豆を発酵させて味噌や醤油にしたことで、結果的により多くの人が食べられるようになったんじゃないかと思っています。
安田
なるほどなぁ。発酵させることで、長期保存も可能になりますしね。

久保
まさにそうです。そして、腐敗ではなく発酵しているからこそ、食べ物はさらに「熟成」して味も変わっていくんです。
安田
なるほどなぁ。そういった発酵のメカニズムのようなものが解明されるよりもずっと前から、世界中の人たちは発酵食品を取り入れていたわけで。それって改めて考えてもすごいことですね。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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