第162回 人がやるべき仕事

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第162回「人がやるべき仕事」


安田

ついにスズメバチ駆除にもドローンが登場したそうです。

久野

当然そうなるでしょうね。人間がやるには危ないし。スズメバチの巣ってすごく高いところにあったりしますから。

安田

はしごで登って巣に近づくのは命がけですよ。スズメバチも狙ってくるし。

久野

ドローンはわざと自分を攻撃させるみたいですね。

安田

はい。敵と認識するフェロモンを付けて、そこに集まってきた蜂を効率良く一網打尽にする。

久野

あらゆるところで、こういうイノベーションが起こっていきますよ。

安田

テクノロジーが発達すると「人間の仕事がなくなる」って言われるじゃないですか。たとえば今まで手作業でハチの駆除をしてた人の仕事とか。

久野

そうですね。だけどドローンの運転がめちゃくちゃうまい人は、仕事が増えますよ。

安田

つまり仕事が減るんじゃなく中身が変わるだけってことですか。

久野

はい。仕事のやり方が変わるだけ。

安田

スズメバチを駆除するという目的はなくならないですもんね。

久野

自然の力には勝てないですから。言い方は悪いですけど、この仕事って楽しそうじゃないですか。私もやってみたいと思いました。

安田

ドローンで駆除できるんだったら、やってみたいですよね。危険もないし。

久野

現地に行く必要すらないですから。映像さえ繋がっていればどこにいても駆除できちゃう。

安田

現地に行かないんですか。

久野

だってドローンのカメラがあれば、行く必要ないでしょ。

安田

確かに。

久野

ドローンで近づいたほうが細かいところまで見えるし。そのほうが早いし。

安田

どうやって巣を見つけるんですかね。あれは長年の勘とかが必要ですけど。

久野

巣を探すドローンを飛ばすんじゃないですかね。第1便として。

安田

なるほど。巣探し専用ドローン。

久野

今のテクノロジーならできると思います。

安田

蜂の巣を探す時って、蜂を捕まえて印をつけて人間が追いかけるんですよ。

久野

すごいアナログですね。

安田

巣を見つけるドローンがあったら職人が要らなくなります。駆除に来るのはIT部隊みたいな人たちですかね。

久野

人は来ないでしょうね。ドローンが宅配で届いて、それを勝手に操作してもらって。

安田

なんと。

久野

あとはボタンを押すだけ。それでドローンが動き出して、勝手に駆除して。で、駆除が終わったら、勝手に帰っていく。

安田

すごい!

久野

たぶん行政ではなく民間がやるんじゃないですか。だから仕事としてはなくならないと思う。

安田

仕事に携わる人は激変しますけど。

久野

そこはスズメバチ駆除に限った話じゃないです。

安田

どんどん仕事が置き換わっていくと。

久野

問題はコストですね。ドローンを自動で飛ばすとコストがかかるので。どこかで人間より安くなるところまでいかなきゃいけない。

安田

最低賃金が上がったらそうなるんじゃないですか。

久野

どうでしょう。スズメバチの巣を探すニッチなドローンを誰がつくるか。

安田

スズメバチだけじゃ元が取れないですもんね。

久野

いっぱい機能がつくんじゃないですか。ゴキブリ駆除とかネズミ駆除とか。

安田

なるほど。これ一台で全部駆除してくれるドローンみたいな。

久野

そうそう。

安田

考えてみれば屋根の修理とかも、そのうちドローンがやっちゃうかも。

久野

技術的にできるようになるまで、そんなに時間はかからないと思います。

安田

問題はやっぱりコストですか。

久野

はい。人間が屋根に登ったほうが安いから登るんだと思う。

安田

いずれ人間はやらなくなるんでしょうね。

久野

すべてが自動化するには過渡期があって。たとえば屋根の雪かきで亡くなる人って多いんです。

安田

落ちちゃう人?

久野

はい。ああいうのをなくすために、熱線で雪を溶かすドローンが出てくるとか。

安田

一家に一台あれば、スズメバチ駆除から雪かきまで全部やってくれる。

久野

そうなったら普及するのは早いでしょうね。

安田

家事もやってほしいですね。カレーを混ぜてくれるドローンとか。

久野

できるんじゃないですか。AIが音楽をつくったり絵を描いたりする時代ですから。

安田

でも音楽をつくる人はなくならない気がします。つくりたい人がいるから。

久野

カレーも同じじゃないですか。

安田

確かにそうですね。つまり、やりたくない仕事はドローンがやって、人間はやりたいことをやればいいってことですね。

久野

それが理想の姿だと思います。

安田

スズメバチ駆除をやりたいって人もいるかもしれない。手作業でしかできない駆除とか考え出して。

久野

やりたい人はやればいいんですよ。ニーズがあれば発注してくれるでしょうし。

安田

そのこだわりが大好きって人はいますからね。

久野

車も絶対に手洗いじゃないとダメって人がいるし。

安田

私はゴルフのリカバリーをドローンにやってほしいです。

久野

代わりに打ってもらうんですか?ゴルフ行かなきゃいいじゃないですか。

安田

ティーショットとパターだけやりたい。トラブルとかアプローチは代わりにやってほしい。

久野

もはやゴルフじゃない(笑)

安田

本当のゴルフ好きはトラブルも楽しむんでしょうね。

久野

不完全だからこそ人間がやる価値があるんでしょう。

安田

深いですね〜。

久野

最終的には好きか嫌いかですよ。

安田

誰もやりたがらない仕事は自動化した方がいいですか。

久野

海外から人を入れないと成り立たない仕事は、もうテクノロジーで解決したほうがいい。

安田

高級な介護だけ人間がやるとか。

久野

ホテルも1泊5万円ぐらいのところしか、ドアボーイはいないじゃないですか。

安田

人の手作業を求めるなら、より高くしていかないと。

久野

それが正しい姿だと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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