第203回 メタバースの法整備

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第203回「メタバースの法整備」


安田

メタバースの世界でセクハラが横行しているそうです。

久野

つきまといですか。

安田

アバターをペタペタ触ったり。アバターの近くに寄ってきたり。

久野

え!アバターを触ってうれしいんですか。

安田

そこがちょっと理解できないんですけど。しかも「不愉快だ」って怒ってる人が、じつは男性なんです。男性だけど女型のアバターで。

久野

複雑ですね(笑)

安田

そうなんですよ。触ってくる人が男かどうかも分かりません。もしかしたら男型アバターを使ってる女性かもしれないわけです。

久野

男性の女型アバターを女性の男型アバターで触ってくる・・・

安田

かもしれないという、すごく複雑な状況でして。

久野

わけが分かりませんね。

安田

アバターを触ると法的にはセクハラになるんですか。

久野

弁護士に聞かないと分からないです(笑)たぶん仮想空間のルールがあるはずですよ。

安田

仮想空間のルール?

久野

何らかの利用約款みたいなものですね。

安田

なるほど。他人のアバターを触ってはいけないとか。

久野

つきまとっちゃいけないとか。

安田

可愛い女の子だと思ってアバターを触ったら、動かしてるのは1カ月ぐらい風呂に入ってないおじさんかもしれない。

久野

あり得ますよね。

安田

アバターを触る人って、そんなことは想像しないんでしょうか。女型のアバターを使う男性って多いらしいですけど。

久野

それは安田さんが、まだアバターの世界に入れてないからでしょうね。

安田

どういう意味ですか?

久野

「誰かが動かしてる」なんて世界観はないと思いますよ。

安田

完全にそこが現実になってしまってる。

久野

そう。「アバターが私なんだ」って意思でやってると思う。だから不快って感じるんじゃないですか。

安田

独立した1個の人格として成り立ってるってことですね。

久野

そこまで入り込めない人は途中でやめちゃいそう。そんなにハマらずに。

安田

単純にやり易さもあると思います。ゲームだと女型アバターの方がみんな助けてくれるんですよ。

久野

そういう傾向はあるでしょうね。

安田

でも確かになりきってしまえば感覚が変わっちゃうかも。

久野

現実と切り離すところに価値があると思うんですけど。それが仮想現実の醍醐味ですから。

安田

もし今回のセクハラが裁かれるとしたら、操ってた人が裁かれんですか?それともアバターが出入り禁止になるんですか?メタバースの中で逮捕されるとか。

久野

出入り禁止でしょうね。アカウント削除イコール死亡みたいな感じじゃないですか。

安田

なるほど。確かにアカウント削除は死亡ですね。そのうち懲役3年とかも出てきそう。

久野

3年間は動かせないとか。ログインできないとか。入れるんだけど出られないとか。

安田

出られないのは怖いですね。囚人服を1年間着なくちゃいけないとか。

久野

メタバースならではの罰則が出てくるかもしれません。

安田

リアル世界も別次元から見たらアバターみたいなものですよ。

久野

スピリチュアルな人はそう言いますよね。

安田

魂という本体が肉体というアバターを操っている感覚でしょうか。

久野

安田さんの魂が女性かもしれないってことです。

安田

おお!確かに。でも魂に男とか女とかあるんですかね。

久野

どうなんでしょう。

安田

メタバースの中でお金稼ぐと、労働法が関わってくるって話でしたよね。

久野

まだ未整備の状態ですね。これから色んなことが決まっていくと思います。

安田

どうなっていくんでしょう。

久野

仮想空間の比重ってまだまだ低いじゃないですか。これがどんどん大きくなってくるんですね。そうすると仮想空間でいじめられたり。

安田

いじめも出てきますか!

久野

ぜったい出てくると思います。結局は人間のやることなので。

安田

確かに。

久野

現実と仮想空間の比重が変わってくると、色んな問題や危険なこととかも起こる。

安田

仮想空間にも国家みたいなのができる可能性がありますね。そっちはそっちの法律があって。

久野

可能性はありますね。

安田

ロシアとウクライナで戦争してますけど、仮想空間の中では敵同士が同じ国の人だったり。もしかしたら結婚してたり。家族だったりするかもしれない。

久野

あり得ます。

安田

脳がだんだんと現実と区別がつかなくなっていくかも。

久野

なるんじゃないですか。だからセクハラとかが問題になるんですよ。本人はリアルに触られてる感じなんだと思います。

安田

ある意味、恐ろしいですよね。脳がリアルとメタバースの区別をできなくなる。

久野

どんどんそっちの方に進んでいくと思います。

安田

それが仮想現実ですもんね。区別がつかないほど価値がある。

久野

はい。それと同時に色んな問題が起こってきますよ。

安田

セクハラは無くなりませんか。

久野

逆に増えていくでしょうね。リアルで起こってることはメタバースでも起こるでしょうから。仮想空間で浮気したとか。

安田

前の彼氏にストーカーされるとか。

久野

絶対そういうケースは出てくると思います。

安田

ストーカー禁止のルールもできていくんでしょうか。

久野

できると思います。

安田

メタバースでの結婚とか。

久野

それは早期にできるんじゃないですか。

安田

離婚調停とかも出てくるんでしょうね。遺産分けはどうなるんでしょう。子供の親権とか。

久野

どんどんリアルに近づいていくと思います。

安田

家庭内暴力で訴えられたり。

久野

職場でのパワハラとかもあるでしょうし。終身雇用が出てくるかもしれない。

安田

アバターで終身雇用?そんなこと望む人がいますかね。

久野

よりリアルに近づいていったら安定を求める人も出てくると思う。

安田

バーチャルの人間関係で鬱になる人が出てきたり。

久野

出てきますよ。最後はマトリックスみたいに、カプセルの中に入れられてゴーグルつける世界になるかもしれない。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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