第8回 農業の発展が人間の食に与えた影響

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第8回 農業の発展が人間の食に与えた影響

安田
前回、私は「たとえ体に悪いと分かっていても、美味しいと感じるものが食べたい」と主張していたわけですが(笑)。そもそも人間はいつ頃から生命維持のためだけではなく、食べることを楽しむようになったんでしょうね?

久保
おそらく約1万年前、人類が1つの場所に定住して農耕を始めたことがきっかけだと思っています。それまでの狩猟民族には見られなかった「食糧の保管・貯蔵」を始めたんです。
安田
ああ、確かに。いつ獲物が捕れるかわからない狩猟民族にとっては、食事はまだ「生命維持」の要素のほうが大きかったでしょうね。

久保
ええ。ところが農業を始めたことで「食品の余剰」を持てるようになり、心に余裕が生まれたわけです。それが「食べることを楽しむ」ことにつながってきたのではないかと思っています。
安田
つまり人類の「食習慣」が変わったというわけですね。それって良いことのような気もするんですが、久保さんはそもそも「農業の始まりが、人類の不健康の始まりだ」と思われているんだとか?

久保
そうなんです。農業は英語でアグリカルチャー。つまり文化なんですよ。そういう意味では「自然」だとは言えない。
安田
確かに、本来だったらその場所には生えていないものを、土を耕して手入れをして生やしているわけですもんね。だからそれは「不自然」だというわけですか。

久保
ええ。そういえば地球史上、最大の勝者は小麦だって言われているの、ご存知ですか? 小麦は何もしていないのに、人間が勝手に植えてくれたおかげで世界中で繁栄しているから(笑)。
安田
本当だ(笑)。そう考えると牛や豚、鶏も同じですね。最終的に食べられちゃうとは言え、世界中にいますから。

久保
そう。種の戦略としては、大成功と言えるかもしれません。
安田
でも確か、家畜しか病気にならないんじゃなかったでしたっけ?

久保
確かに、野生動物は体に必要のないものなんて食べないから生活習慣病のようなことは基本的にあり得ません。一方の家畜やペットには生活習慣病が多くみられますね。
安田
そうでしょうね。人間の「文化」の中にあるから人間に似てくるんでしょう。

久保
しかも、わざとメタボにして作られるフォアグラや、ビールを飲ませることでたくさん刺しを入れた牛肉なんかが売られていますよね?
安田
人は美味しい美味しいと食べていますけど、改めて考えると明らかに不自然だ。

久保
ですよね? 野菜にもメタボな野菜ってあるんですよ。化学肥料で育てられた野菜。
安田
ははあ。化学肥料を使った野菜って、大きく育ちますもんね。

久保
ええ。あれは化学肥料で細胞自体を無理やり大きくしているわけです。だから細胞壁が弱くなっている。で、そういう野菜を冷蔵庫に放置しておくとどうなると思います?
安田
腐りますよね。酷い時はドロドロになったりして。

久保
そうなんです。細胞壁が薄いから形を保っていられなくなるんですよ。でも自然農法で育てた野菜は、冷蔵庫に放置していても枯れるだけなんです。乾燥して小さくなるだけ。
安田
へえ! そうか、細胞壁がしっかりしているから、細胞が崩れないんですね。

久保
仰るとおりです。つまり私たちは肉や魚だけでなく野菜も、不自然な育て方をしたものを食べている、と言わざるを得ないわけですよ。
安田
そうなんですね。とは言え、「不自然だから」と農業をやめ、養殖や畜産もやめれば、きっと飢え死にする人が出ますよ。どうしたらいいんですかね?

久保
それで言うと安田さん、「ヴィーガン」ってご存知ですか?
安田
ええ、完全菜食主義者でしたっけ。宗教上の理由とか食事のこだわりで、野菜しか食べない人たち。

久保
そうそう。でも実は最近では環境問題に関する1つの主義・主張としてヴィーガンを選択する人が増えているんですよ。
安田
環境問題と菜食主義がどう繋がるんでしょうか?

久保
家畜って、ものすごい量の穀物を食べますよね。その穀物を育てるために、これまでにアマゾンの約2/3の森林を伐採したとも言われています。
安田
ほう、家畜を育てるためにそれだけの森林を犠牲にしてきたと。

久保
ええ。その量の穀物を仮に人間が食べる方にまわしたら、全世界の人が十分に食べられる量なんだそうです。
安田
そうなんですか? そういえば牛から出るメタンガスが温暖化を進めているとも言われていますよね。そうなると家畜を育てることに意義を見い出せなくなってきました。

久保
まさにそれが、環境問題の主義としてヴィーガンを貫いている人たちの主張です。
安田
そういうことですか。なるほどね。でも私もね、いずれ人間は肉を食べなくなるんじゃないかと思っているんですよ。それは環境問題の観点からというよりは、罪悪感によって。

久保
確かに、「殺して食べる」ということに耐えられなくなる人も増えるかもしれないですね。
安田
鳥インフルが発生して何万羽も地面に埋めた、とかニュースを聞くだけでも、本当に酷いことをしているなあと思いますからね。

久保
養鶏もなかなか劣悪な環境ですよね。本来よりも早く育つように品種改良し、卵をバンバン産ませる。そういう企業努力があったから、日本の卵の値段はずっと安さを保てていたとも言えますけど。
安田
これまでのお話を聞いていると、そもそも農業や畜産が不自然で良くないと。でもそれならもう石器時代に戻らなきゃいけなくなっちゃいますよ(笑)。

久保
笑。そういえば昔アメリカで「パレオ・ダイエット」といって、旧石器時代の食事を参考にしよう、というダイエットが流行ったんです。
安田
そうなんですか? 日本で流行していた記憶はないんですが(笑)。

久保
ええ、日本人には合わなかったんですよ。誤解を恐れずに言うと、その理由は血液型だったと私は思っています。
安田
ダイエットに血液型が関係してくるんですか?

久保
ダイエットに限らず、食事の効果の表れ方が血液型によって違うんです。たとえばネアンデルタール人やクロマニヨンなどの人類の祖先は、O型から始まったそうです。
安田
そうなんですか。私、O型ですよ。かなり原始的なんですね(笑)。

久保
笑。その頃は狩猟民族、つまり旧石器時代。パレオ・ダイエットが推奨する食事はO型の人にマッチすると考えると、国民の多くがO型だと言われているアメリカの人たちに効果が出るのも納得ですよね。
安田
そうか、日本人は血液型がバラけているから、それほど多くの人に高い効果は表れなかったということですか。

久保
そうなんですよ。ちなみにA型が出てきたのは農耕が始まった頃。そして発酵食品や乳製品を食べる遊牧民族が表れ始めた頃にB型が出てきたと言われているそうです。
安田
そしてAB型は、A型とB型のハイブリッドなわけですね。

久保
そういうことです。もちろん血液型だけで判断してはいけませんが、「効果の出やすい食べ方」という傾向はなんとなくあるんだと思いますね。
安田
なるほどなあ。時代背景や国の違いによっても、人間の健康に合う食事や食習慣にはいろいろと変化があったというわけですか。「自分に合った食べ方」について、ますます興味が湧いてきました。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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