建設業の倒産が急増していまして。3年ぶりの増加ということです。
この問題はけっこう根深いんですよ。
記事によると工期の長期化、人手不足、資材高が原因だそうです。工期の長期化は人手不足と被ってる気がしますけど。
長期化する原因は人が足りないことと、もうひとつは資材が入ってこないこと。
中国に買い負けてるってやつですか。
そう。家を建てる時に「トイレの蓋だけがない」って笑い話になってます。だから納められない。そうするとキャッシュが入ってこないじゃないですか。
引き渡しをしないと入ってこないですもんね。
引き渡しが遅くなって資金繰りが厳しくなる。さらには賠償や訴訟のリスクもあって。今けっこう大変なんですよ。
納期が遅れると揉めますよね。引っ越しできないから余計な家賃もかかって。
契約時に法律関係の書類もしっかり固めておかないといけないし。建設は難しい時代になってます。
つまり原因は資材不足と人材不足ですね。
現場を見てるともうひとつ大きな問題があって。はじめに見積りを取ってから家を建て始めるじゃないですか。
はい。
それが途中でどんどん高くなっていくわけですよ。
家が当初の予定よりどんどん高くなるんですか?
家は高くできないじゃないですか。
高くなったら困ります。ローンの金額も決まってるし。
だけど資材は上がっちゃうわけですよ。建てている間に。
安いうちに仕入れておくとか。
中小企業にはそんな余裕がないわけです。キャッシュもないから先買いができない。
それは厳しいですね。
発注を受けた3〜4カ月後にめちゃくちゃ資材価格が上がったり。強いところが買い占めたりするので。
強いところというのは、大手ですか。
大手ですね。「あそこには出すな」とか言って。すると収益が全然合わない。
つまり買い負けているわけですよね。
そうです。規模の大きなところに買い負けちゃう。なので高く買うしかない。
納品するために資材を高く買って、人不足解消のために給料もたくさん払って。
そうなりますよね。
解決するには売値を上げるしかない?
それしかないでしょうね。今は売れてるんだけど資金が回ってない状況なので。
値上げに踏み切る企業は増えそうですか。
いや簡単ではないです。何らかの付加価値をつけないと売れないので。
もう大手グループの傘下に入るしかないのかも。
そうなっちゃうかもしれないです。建設業は昔から数が多いので。4〜5人の建設会社ってよく見かけませんか?
地方に行くと多いですよね。
そういうスケールではもうやれない時代になってきてます。
資金が回らないから?
資金も回らないし、人も集まらないです。
4〜5人でも凄腕の大工を抱えてる集団ってあるじゃないですか。
テレビのリフォーム番組に出てくるような職人さんですか。
はい。すごい腕を持っている職人さん。そういう人が集まってる会社はきっとやっていけるんでしょうね。
そう思います。おそらく資材もかなりマニアックでしょうし。
なるほど。
みんなが使わないようなものを上手に使ったり。大量生産の資材を使う会社がいちばん厳しいと思います。
今後さらに厳しくなっていきませんか?人不足が解消するとか、資材が一気に入ってくるとか、そういうイメージが湧かないんですけど。
湧かないですよね。トヨタですら買ってから1年待ちじゃないですか。
あのトヨタでさえ。
半導体がないとか。このままだと本当にまずいですよ。どの業界も。
まだまだ、こんなもんじゃ済まないってことですか。
済まないと思います。
3月の倒産件数が155件で歴史的だって書いてありますけど。まだ増えていく。
増えてきます。それは確実でしょうね。
小さいところはどんどん潰れていくと。
はい。
そこにいる社員さんはどうなるんでしょう?
人材不足ですから。現場に関しては大きいところが持っていっちゃうでしょうね。
じゃあ、その人たちの待遇は逆に良くなるかもしれませんね。
その可能性はあります。
いちばん困るのは中小建設会社の社長さんってことですか。
そうなんですよ。
手に職があれば、自分自身も職人として大手に雇われちゃうのもありですよね。
ただ大手は制約が厳しくて。
そうなんですか。
そういう観点から中小企業を選んでいた人もいるんです。
中小の方が待遇がいいってことですか。
待遇がいいというより、あんまりルールがない感じ。楽しくやれるってことですね。
だけど今後は厳しいと。
厳しいと思います。
やっぱり外国人でしょうか。
外国人にとっても、日本はコスパのいい国じゃなくなってきてます。
稼げる国じゃなくなってますもんね。
小さな会社はどんどんなくなっていくと思います。
小さな会社がなくなるとマーケットはどうなるんですか。
家がもっと高級品になっていくと思います。低価格住宅はもう無理でしょうね。
大手の高い住宅しか選択肢がなくなるってことですか。
はい。このままだとそうなっていきます。もう普通の人には家が買えない時代になります。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。