最低賃金がついに1000円を超えたそうですね。
全国平均が1000円を超えました。
まだ1000円以下の地域もあると。
そうです。ただ前も言いましたけど4%上がるって凄いことで。20万の給与だと8000円ですよ。
日本経済は4%も成長してないのに。
単純に言うと粗利に4%以上は乗っけないと回らない。とくに労働集約産業はもう成り立たないです。
ネットの反応は二極化してますね。労働側は「税金アップに全然追いつかない」という意見が多くて。経営側は「もう人なんか雇えない」と。久野さんはどう思いますか?
雇用は減らないと思います。人不足なので力のある企業が雇いまくる。もう止まらないと思いますよ。
「これ以上賃金が上がったら人を雇えない」という会社は、もうやっていけないと。
そのゾーンの会社が一番苦しいです。もう完全に需給バランスが崩れてますから。最低賃金もまだまだ上がりますし、最低賃金以上に上がっていくと思います。
まだ最低賃金は上がりますか?
間違いなく上がります。来年5%は硬いんじゃないですか。
じゃあ本当に全国最低が1000円を超える日も近い。
絶対に超えると思います。
それでも海外に比べると安いですもんね。
最低賃金が増えたのはいいことだと思います。経営者はそこから考えるべきじゃないですか。逆算して成り立たない時点でもう無理ってことですよ。
給料は高くなるし、採用にはお金がかかるし、育てても黒字になった途端に辞めるし。これ3点セットじゃないですか。
それを織り込み済みでビジネスモデルを組み立てるしかないです。
ちなみに人件費以外もインフレに向かっていくんですか。
今とんでもなく上がってますよ。たとえばITツールなんて料金が2倍ぐらいになってます。
なんと。
日本のサービスや商品は労働集約型でコストを抑えてきたので。人件費が上がるってことは全部の値段が上がるっていうことです。
なるほど。
ITツールなんて1人単価で500円、600円、1000円と上がっていくんです。
その分とうかいさんも値上げしなくちゃいけないですね。
そうなんですけど。給与計算の代行サービスって1人100円増やすだけでいろいろ言われるので。
それでも値上げするんですよね?
はい。解約覚悟で値上げしてます。
解約した会社はもっと安いところに頼むんですか。
代わりがあると思ってますね。ただ今の時代もう安くは受けないんじゃないですか。
どこも安売りは厳しいですもんね。
そうなんですよ。絶対に人件費は上がっていきますから。しかも他社より上げていかないといい人材が来ない。やっぱり値上げしていくしかないですよ。
つまり同業他社より上げるぐらいの決断が必要だと。
はい。省人化するとしてもそのための人材が必要なので。
省人化するための人材ですか。
たとえばITツールを使って省人化するのに、1個1個の設定を人間がやらなきゃいけない。ロボットがやってくれるわけじゃないので。
なるほど。少なくするためにも優秀な人材が必要だと。
一定のところまで生産性を上げるのに人がいるんです。その後は増やさず成り立つようになっていくんですけど。
仕組みをつくるのに人材が必要だってことですよね。
そうです。雇用じゃなくてもいいって話もあるけど、業務委託でも張り付いてやってくれる人がいないと。
専任に近い形でやってくれないと回らないと。
そうですね。
じゃあこれからもどんどん人を増やすんですか?
ウチは時代に逆行しながら採用を頑張ってます(笑)
そのためには社員の報酬も上げないといけないですよね。
はい。かなり意識してあげてます。
クライアントの社員さんも給料は上がってますか。
ここ1年ぐらいでみんな上げてきてますね。だいたい5000円から1万円ぐらいは上がってます。
上げられるってことは余力があるってことですね。
ウチは他の事務所より顧問料も高いので。優良な企業さんがすごく多いです。
「高くても質が良ければいい」という会社じゃないと、これからは生き残っていけないですよね。
とくに労働集約産業では「品質が良くて安い」なんて至難の業ですから。
ありえないですよね。
昔は情報が閉鎖されていたので、質のいい人材が定着してくれたんです。今はオープンなので「他社ならもっと稼げる」ってすぐバレちゃう。安くて質がいいのはもう無理です。
質のいい人材ほど転職しちゃいますよ。
昔でいうグッドカンパニーからも人材が流出してます。うちの会社にも地方銀行から転職してきたり。
社労士さんも流動化してますか。
もちろん社労士も流動化しています。
流動化を前提にすると、新卒は何年で収益化しないといけないんでしょう? 3年もかかると厳しいですよね。
半年経った頃に転職しますから。
半年で黒字化しない人材は採っちゃダメと。
でしょうね。半年でトントン。1年経ったら確実に黒字化して稼いでくれないと。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。