第240回 フリーになるべきではない人

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第240回「フリーになるべきではない人」


安田

フリーランスが労働安全衛生法の対象になるそうで。

久野

弱いフリーランスを守っていこうという意図ですね。

安田

フリーランスは弱い下請けの立場だから、いきなり契約を切られたり、値段を叩かれたり、お金を払ってもらえなかったりすると。

久野

そういう人を救わなくちゃいけない。

安田

その前提にすごく疑問があるんですけど。私の周りにいるフリーランスと違いすぎて。みんな自分で仕事を選んでけっこう稼いでます。

久野

安田さんの周りはちょっと異常だと思います。

安田

そうですか。

久野

政府が想定してるのは「安い値段でめちゃくちゃこき使われて、本来雇用で雇わなきゃいけないのに無理やり業務委託にされて、丸1日働いて1万円」みたいな人。

安田

そういう人は会社に雇用させたらいいんですよ。実態は雇用なんだから。

久野

そう思います。安全配慮義務を負えってことは雇用とほぼ近しい概念ですから。

安田

安く使うための業務委託はダメってことにしたらいい。そもそもフリーランスって手に職があってちゃんと食べていける人がなるもので。

久野

だけど実際のフリーランスは違いますよ。食べていけない人がやってたり。

安田

そんなのフリーランスじゃないです。

久野

そういうフリーランスが労資紛争で揉めるんです。実質雇用だって訴えられる。労災事故が引き金で。フリーランスで保証がない状態で大怪我すると治療費も出ないから。

安田

つまり雇用してもらえるなら雇用してほしい人ですよね。

久野

そうです。

安田

それがおかしいですよ。「雇用されるのが嫌」って人がフリーランスを選ぶべきで。雇用してほしいけど雇用してもらえない人は、それこそ法律の力で雇用契約に持っていってあげたらいい。

久野

とはいえ、そういう人たちも命令されて働きたくはないんですよ。

安田

そんな自分勝手な。それだったら自分でちゃんと稼げよって感じ。

久野

そんな人とは付き合ってられないですけど、結構そういう人が多いんです。

安田

それは仕事なくなりますよ。なんかインボイス問題と似てますね。消費税を受け取っておいて払ってない。それを払うと生活が成り立たないとか。

久野

あれは本当にズレてますよ。

安田

そもそも消費税ってクライアントからの預かり金じゃないですか。それで生活してどうするんだって。

久野

預り金の横領ですよ。

安田

今までそれがまかり通っていたのが不思議で。なぜあんなに偉そうに「どうしてくれるんだ」とか言えるのか。

久野

免税事業者だから、本当は自分たちも消費税を請求しなきゃいいんです。

安田

ですよね。今までがおかしいわけで。駐車違反してたまたま切符を切られなかっただけ。「今までは平気だった。切符切られたら生活できない」みたいな話ですよ。

久野

まったくその通りですね。今までがラッキーだっただけで。

安田

むしろ「今までの分を払え」って言われないだけでもラッキーだと思わないと。

久野

そうそう。ありがたいですよ。消費税ぐらいは払わないと。

安田

国の政策もズレてますけど働いてる人の感覚もズレてますよ。

久野

やっぱり王道で稼ぐことを考えないと。ちゃんとスキルをつけて稼ぐ。

安田

人の指示命令を聞くのが嫌だったら、自分でスキルをつける以外にないと思うんですけど。

久野

自己責任ですよね。そんなの。

安田

そりゃそうですよ。それで国に守ってもらおうなんて都合が良すぎる。政府が介入して価格アップなんてやったらその人の仕事が減るだけ。

久野

フリーランスって時間じゃなく、クオリティに対して発注しているわけじゃないですか。成果が出ないなら仕事は切っていきますよ。

安田

当然ですよ。問題は明らかに本人のスキルがないことです。

久野

言いづらいけど、それが現実でしょうね。

安田

スキルがあれば仕事は選べるし条件も良くなるし。スキルを高めず条件を良くしてもらおうなんて無理があります。しかも指示・命令されるのが嫌だって。ただのワガママじゃないですか。

久野

端的にまとめるとそういうことですね。

安田

フリーランスで稼げない人は社員になった方がいいです。自分で管理できないなら人に管理してもらうしかない。

久野

そんな人ばかり社員になられても困ります(笑)

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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