この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
18歳から27歳の働き方が大きく変わってきてるみたいですね。
久野
いわゆるz世代ですね。とくに転職思考がめちゃくちゃ強いんですよ。転職志向って世界標準が35.6%なんですけど日本はもう55%を超えてきてる。
安田
転職回数は少ないのに転職したい人は日本の方が多いんですか。
久野
安田
つまりみんな不満を持ちながら辞めずに働いていると。
久野
安田
どこかでこの壁が崩れて大変なことになりそうですね。
久野
何が難しいかって「部下を繋ぎ止める作業」をするのが管理職の仕事になっていること。
安田
久野
冗談ではなくご機嫌取りみたいになってます。その割に管理職の給与が安いのが日本の特徴で、稼がせるために管理職がいるというより部下を維持するためにいる。
安田
現場の仕事はやらされるわ、部下の責任も負わされるわ、それで増える報酬はせいぜい1〜2割。そりゃあみんなやりたがらないですよ。
久野
現場のアンケートを取ると「管理職は2倍以上の報酬がないと割に合わない」という結果です。
安田
私もそのアンケート見ました。「1.5倍程度だったら今のままがいい」っていう。みんな基本的に共働きなので、管理職になると役割分担にも影響が出るんですよ。
久野
安田
かと言って、奥さんを専業主婦に出来るほどの報酬アップも望めない。今のまま2人で働いていく方が人生安定するっていう。
久野
だいぶ前から管理職になりたがらないって言われてますけど、さらに拍車がかかってますよ。
安田
昇進の話すると辞めちゃうみたいな。そういう時代ですよ。恐ろしいことに。
久野
今のままだと日本の企業組織は管理職から崩壊します。
安田
部下の機嫌をとって、現場の仕事もやらされて、数字の責任も負わされて、部下が辞めたら自分の責任になるし。確かに2倍はもらわないとやってられないでしょうね。
久野
終身雇用で「部下は絶対に辞めない」という前提だったら楽なんですけど。
安田
久野
ちょっと言い方が悪いけど、昔は追い込んで詰めていれば良かったんですよ。今は詰めたらいなくなるから。
安田
詰めるどころか優しく声をかけないといなくなります。
久野
管理職の心的ストレスは半端ないですよ。答えも多様化していて「あいつはこうしなきゃいけない」って個別対応しなきゃいけない。
安田
しかもプレイングマネージャーじゃないですか。働く時間は増えるし、責任も増えるし、その割に大して報酬は増えないし。
久野
安田
かといって2倍払えるかっていうと払えない。どうしたらいいんですか、これは?
久野
じつは「上司なし」というチャレンジをする会社が出てきてます。「外注上司」という仕事まであって。
安田
上司を外注しちゃうってすごい発想ですよね。でも現実的に考えてプレイングマネージャーはもう無理でしょう。ご褒美的な昇進とか勘違いも甚だしいですよ。
久野
とくに中小企業の管理職は難しいです。現場をやりすぎてマネージメント能力が育ってないケースが大半だし。
安田
そもそも現場で業績を上げた人を、ご褒美的に管理職にするというのがおかしいんです。
久野
全然違う仕事ですからね。社労士も知識があって仕事ができることと、社労士事務所のマネージメントって全然違いますから。
安田
「営業マンとして売れる人」と「部下の数字を上げられる人」も全然別ですよ。考えてみたら当たり前なんですけど。
久野
売る力がある人ほど発想がそっちに行きますから。人を育てるのは難しくなりますよ。
安田
本人も望んでないわけですし、会社としても無理して昇進させる必要はなくなってくるんじゃないですか。
久野
安田
現場で頑張って成果を上げてくれればいいわけで。もちろん給料は増やしていかないといけないですけど。
久野
そうするとマネジメントはどうするのか。システム化してしまうのか。
安田
外注する企業も増えていくんじゃないですか。マネジメントのプロに管理してもらって。仕事は教えられないけど機嫌良く働いてもらうマネジメントのプロみたいな。
久野
そういう選択肢もあるでしょうね。ただ外注するとそこそこの値段を払わなきゃいけない。
安田
久野
おそらく二極化するでしょう。ある程度の規模の会社は管理職にちゃんと報酬を払いながら伸びていく。払えない会社は社長が見れる範囲でマネージメントしていく。
安田
小さな会社から中間管理職がいなくなって社長と現場だけになっていくと。
久野
「中間管理職=高給」という常識になると思います。世界的に見ればそもそもマネジメントって高給取りなんですよ。
この対談の他の記事を見る
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。