この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
最低賃金1500円は通過点だとおっしゃっていましたよね?給料アップはもう必然だと。
久野
はい。1500円としても毎年7%くらい上げていかなきゃいけない。でもそこで終わりじゃない。
安田
ネットでの経営者の意見は2つに分かれておりまして。「もう雇えない」という人と、「当然上げていかなきゃダメだよね」って人と。久野さんの回りはどっちが多いですか。
久野
うちの回りは「上げていく」という人が多いですし、私自身もそういうお客さんと付き合うことだけ考えて経営しています。
安田
まあそうですよね。「これ以上給料を上げられない」と社長が言ったら誰も来なくなる。
久野
そうですね。本音は別として「上げる」って言わなきゃいけないですよ。
安田
「もっと国が補助金を出せ」という意見もありますが。
久野
そもそも補助金を頼りにする経営は問題アリだと思います。補助金がなくなったら苦しくなるわけじゃないですか。本末転倒な気がするんですよ。
安田
言われたことを真面目にしっかりやるのが社員の仕事であるように、儲かるビジネスを考えるのが経営者の仕事ですよね。
久野
ほんとそう思います。今年より来年、来年より再来年の方が儲かる、給料も上げていける、という経営をしないといけない。
安田
「補助金がないとやっていけない」なんていうのは、社長がサボってることに他ならないと。
久野
「私は経営能力がないです」って言ってるのとほぼ同義ですもんね。
安田
言ってることが他責思考のサラリーマンと同じですよね。国の補助金に不満をぶつけて。
久野
国が悪いとか、この業界が悪いとか、業種が悪いとか、政治家が悪いとか。でもそういう人って多いですよ。
安田
それ経営者が言っていいのかなっていつも思うんですけど。いずれにしろ従業員は給料が高い職場にどんどん移っていくわけで。
久野
安田
給料を上げられない会社なんて「淘汰されていいんじゃないの」って、国も思ってそう。
久野
いつも安田さんが言うように「給与を増やせる経営者」を労働者は選ぶでしょうね。
安田
当然ですよ。同じ労働量で「いかにたくさん給料を払ってくれる社長か」が大事。社長も同じことをしてるんですから。できるだけリターンの多い投資を選んでいるだけ。
久野
安田
「上げられません」なんて言っちゃうのは「成果を出せません」って業者が言うのと同じ。ちょっと感覚がずれてる気がします。
久野
でもそういう人が多いですよ。デフレの期間はそれで生きてこれちゃったから。おかしくなってんだと思います。デフレマインドの経営者がめちゃくちゃ多い。
安田
久野
何もやらなくても利益が増えていく時代に生きてきたので。
安田
久野
それに対して全く追いつけていないんじゃないですか。
安田
久野
プライスは絶対上げなきゃいけない。給与や仕入れ価格も当然上がるわけで。この3つを受け入れない限り、もう経営やっちゃいけないんですよ。
安田
現実問題として、その「やっちゃいけない人」がたくさん経営をやってます。
久野
雇用の流動化が進む中で淘汰されていくと思います。人が全く寄り付かなくなるんじゃないですか。
安田
廃業しても社員は別に問題ないと思うんですよ。転職すりゃいいだけなので。だけど社長はどうしますか。社長とその家族はどうやって生きていくんですか。
久野
安田
久野
いや、経営者はもう現場では働けないと思います。人の言うこと聞かないですもん。
安田
そうですよね。頭も固かったりするし。サラリーマン気質の元経営者って、すごく雇い辛そう。めんどくさそう。
久野
安田
久野
1人で稼げる人は残れると思うんですけど、それ以外は本当に厳しいと思いますね。
安田
既存の社員がいることで「何とか成り立ってる中小企業」って多いじゃないですか。そういうところはもう軒並み厳しいですよね。
久野
厳しいですね。これからどんどん社員が抜けていきますから。「人材紹介会社が許せない」とか言ってる社長もいますけど、そんなこと言ってる時点でもうアウトですよ。
安田
給料を抑えると余計に採用コストがかかるし。どんどん人も辞めちゃうし。
久野
安田
つまり儲かるビジネスを考える以外に方法はないってことですよね。久野さんの肌感覚では何%くらいが生き残っていけそうですか。
久野
残るのは2割くらいじゃないですか。過去1年間で「社員の給料を増やしていない」という会社はもう厳しいと思います。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。