第311回 20代がどんどん辞めていく近未来

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第311回「20代がどんどん辞めていく近未来」


安田

今の20代の人は入社3年以内に半分近く辞めちゃうそうで。

久野

従業員数100人未満の会社で大卒20代の42%が3年以内に辞めています。

安田

大卒が42%、高卒は何と45%も辞めちゃう。

久野

5人未満の会社に限定すれば59%辞めてます。つまり3年で60%いなくなっちゃうってことですよ。もう20代採用はやらない方がいい。

安田

よほど儲かってる会社じゃない限り、もう新卒や20代を採っちゃダメってことですね。

久野

20代は贅沢品ですね、このデータを見てると。

安田

採用コストだけじゃないですから。

久野

採用と育成とで実質300万から500万ぐらいはかけてるんじゃないですか。

安田

大企業は10人に1人残ってくれれば元が取れるらしいですけど。

久野

おお、すごいな。中小企業は絶対無理ですね。

安田

中小企業ってそもそもそんなに利益が出ませんからね。大企業みたいにぶら下がり社員がいたら大変ですよ。

久野

中小企業は5人いたら5人とも黒字じゃないと維持できない。

安田

小さい会社ほど1人分の赤字は厳しいです。しかも採用にめちゃくちゃお金かかるし。

久野

それだけお金をかけても採用レベルでは大手に及ばないじゃないですか。

安田

そうなんですよ。それでいて3年で半分も辞めるって。

久野

3年で半分ですから、5〜6年したら8割ぐらい辞めてそう。

安田

しかもこれから20代の転職はどんどん増えていきそうですし。

久野

アメリカよりも雇用の流動化が進んでるみたいですね。日本の方が転職が多い。

安田

若い人は転職したら100万円以上年収が増えますから。

久野

何ができるか関係ないですもんね。転職するかどうかだけの話になっちゃってます。

安田

今までが低すぎたってことでしょうね。

久野

そういうことでしょうね。初任給30万円が最低ラインになってきましたから。

安田

大手に関していえば、これまでも30万円くらいは出せたってことでしょうね。

久野

そうなんですよ。大企業はかなり余力があるので。中小企業に忖度して「これぐらいにしといてあげるよ」ってやってたんでしょうね。

安田

中小企業の若手採用はどうなっていくと思いますか?

久野

1000人以上の会社でも3年以内に3割が離職していくので。中小企業の狙い目としてはこの3割の人材じゃないですか。

安田

大手を辞めた3割を採るってことですか。

久野

そこが30後半ぐらいになった時に採りに行くしかないと思います。

安田

彼らは報酬アップのために転職するわけで。今より条件が劣る中小企業に行くとは思えないんですけど。

久野

確かに20代30代は引く手あまたですよね。じゃあ40〜50代ですかね。中小企業の狙い目は。

安田

言われたことをしっかりやってくれる労働力として確保するなら、50歳以上を狙わないと無理でしょうね、中小企業は。

久野

確かにそうかもしれません。

安田

30〜40代を採用するなら妥協しないことが大事だと思います。中途半端な人材を集めても利益が出ないので。1000万くらい払っても価値があるって人だけを採用しないと。

久野

独自の価値を、その人と一緒に生み出していくっていう。確かにそれ以外には方法ない気がする。

安田

今までは大手が採って中堅が採って、残った人材の中からギリギリ使えそうな人を集めてきたじゃないですか。

久野

それではもう利益が出ないでしょうね。もっと儲かるビジネスを考えないと。

安田

でも儲かるビジネスをやろうと思ったら、何かしらの分野では突出した人が必要じゃないですか。接客がすごい、この人から買いたい、みたいな人。

久野

そうですね。「この人が作ったものを買いたい」というくらい、こだわりの開発をする人とか。

安田

人数を減らして、そういう「こだわり人材」だけを採用した方がいいですよ。

久野

それなりの金額を出せばむしろ面白い人を捕まえられるかもしれない。

安田

今まで10人採っていたのを1人に絞って。その分たくさん給料を払う。

久野

なるほど。

安田

スペシャリストとして「これさえ磨いてくれればいい」みたいな採用。それを価値に変えて価格を上げていく。そうすると辞めないじゃないですか。

久野

それも一つの答えですね。それなりに大きくなっていくか。特別化していくか。中途半端はもう無理だと思います。製造業で100人ぐらいの会社は厳しいと思う。

安田

社労士事務所だったら何人ぐらいの規模が最低限ですか。

久野

30人ぐらいはいないと厳しいと思います。

安田

じゃあ5人でやるんだったら特別化していくしかない?「この社労士さんに頼みたい」みたいなタレントだけを揃えて。その人のブランドで値段上げていく戦略。

久野

そういう会社は逆に小さい方がいいでしょうね。

安田

ちなみに30人以上雇用している社労士事務所ってどれくらいあるんですか?

久野

今のところまだ全国に100社ないです。

安田

そんなに少ないんですね。やはり規模拡大は一部の中小企業にしか無理ですよ。私はスモールビジネス&特別化をおすすめします。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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