第314回 管理職になりたくない若者たち

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第314回「管理職になりたくない若者たち」


安田

管理職になりたくない。昇進は「罰ゲームだ」とまで言われているそうで。

久野

もう、どうしたらいいのか。

安田

実際、久野さんはどうしてるんですか?「現場で活躍すれば管理職になる」って、王道のキャリアパスだったじゃないですか。

久野

はい。うちの会社もそうなってます。

安田

みんなが「管理職になろう」と目標にしてくれれば、現場にも活気が出るし。ところが少し前から「管理職になりたくない」という人が増えてきて。

久野

逆に管理職にすると辞めちゃう人が出てきたり。

安田

管理職になると給料は増えるわけですが、それと引き換えに業務負担が増える。責任が重くなる割に給料は大して増えないってことが原因みたいです。

久野

うちの場合は管理職になりたい人はまだいますね。給与差は割とつけるようにしてますし。

安田

どのぐらいの差がつくんですか?

久野

年収ベースで2、3割ってところでしょうか。

安田

50%上がることはない?

久野

50%はないですね。ただ年収ベースだと150万〜200万ぐらいは上がってきますよ。

安田

現実的に考えてそれくらいですよね。でも働く側に言わせると「最低でも1.5倍」「2倍にならないとメリットを感じない」そうです。

久野

最低1.5倍・・・

安田

はい。2倍ぐらいにならないと失うものの方が大きいと感じるみたいです。

久野

安田さんが言うように社員の年収が1000万円に近づいていくとするなら、管理職はもう2000万いっちゃいますね。

安田

その分人数を減らしていくしかないでしょう。これからAIの登場でホワイトカラー職が激減すると言われてますし。

久野

管理職自体が減っていくと。

安田

0にはならないけど、必要な人数が10分の1ぐらいになると言われてます。

久野

なるほど。でもそうしないと回らないですよね。

安田

ただそうなると「元管理職」という人が余ってくるじゃないですか。

久野

そうなりますよね。

安田

「管理やってました」は転職に超不利らしいです。それよりは「現場の仕事ができます」っていう方がよっぽど待遇よく転職できる。

久野

世の中激変するってことですね。

安田

はい。それを考えても管理職って人気がなくなるんだろうなって気がします。

久野

私のイメージする管理職って「現場を理解した上で、1個上のレイヤーから俯瞰的に見て、AIとかRPAを使って業務改革していく」イメージなんですよ。

安田

かなりレベルが高いですね。

久野

そこまでやれば転職しても市場ニーズはあると思います。部下を詰めるとかモニター見て管理するようなキャリアではとても戦えない。そういう人はもう上げちゃいけない。

安田

でも、ほとんどの会社で行われている昇進は「現場で活躍したご褒美」ですよ。

久野

そうなんですよね。

安田

昔はそれで良かったんでしょうけど。給料も増えるし現場仕事から解放されるし。ある意味「現場の上がり」みたいな感じだったじゃないですか。

久野

そういうイメージありました。現場の人間が羨ましがるような。

安田

だけど、さっき久野さんが言ってたような仕事だとすると、管理職ってスペシャリストですよ。

久野

そうですね。全社視点が必要だしAIも使いこなせないといけない。現場を理解してより効率よくしていく仕事。

安田

だとすると「現場で活躍したから管理職」ってこと自体がもう矛盾してるんですよ。

久野

現場のキャリアパスではないと思います。上げる人を慎重に選別しないと余計マイナスになっていくだけ。

安田

上げるという発想自体が変わっていくでしょうね。管理職って上にあるわけじゃなく「別の仕事」というカテゴリーですよ。

久野

そう考えた方がいいですね。

安田

そうなると「現場で実績出したから上げる」はちょっと通用しない。

久野

管理職に選定するのがすごく難しい時代ですよ。昔みたいな管理職は本当に存在し得ないというか。

安田

メジャーリーグでコーチや監督になる人は専門の勉強をするんですよ。でも日本のプロ野球は「現場で活躍した選手」がなっていくイメージ。

久野

確かにそうですね。

安田

管理職をスペシャリストとして捉えるなら「管理の勉強」をしないとなれないはずで。現場で活躍した人には管理職への昇進ではなく、別のご褒美が必要だと思います。

久野

たとえばどんなご褒美ですか。

安田

自宅で仕事できる時間を増やしてあげるとか。休みが自由になるとか。

久野

なるほど。自由度が増すということですね。そうしていった方がお互い幸せな気がします。

安田

そもそも現場とは求められているスキルも資質も違うのに「現場から上げよう」とすること自体がおかしいんです。

久野

今の若手が「管理職になりたくない」「現場のスキルをもっと磨きたい」っていうのは、すごく真っ当な答えなのかもしれません。

安田

管理職のあり方をゼロから考え直さないといけない時代なんでしょうね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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