第316回 シルバー人材の争奪戦が始まる?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第316回「シルバー人材の争奪戦が始まる?」


安田

60代の就業率がめちゃくちゃ高いんですって。60代前半が96%で後半が89%。

久野

晩婚化してるから、もう働かざるを得ないんです。

安田

そうですよね。ただ6割の人は再雇用で給料が下がってしまうそうで。

久野

逆に4割は下がらないってことです。定年延長の手を打ち始めてますし。仕事ができる人は残って欲しいんですよ。

安田

それは60代でも?

久野

若い子は減っていくし、放っておくとみんな他社に移ってしまうし。その対策も含めて65歳まで定年を引き上げる会社が増えてます。

安田

60代でも実力に見合った報酬は支払われるってことですね。

久野

UFJは60代の1000万円プレイヤーが増えているそうです。それが企業のトレンドになってきてますよ。

安田

いずれ70歳を過ぎて働く人も増えていくんでしょうね。

久野

会社から見ると年齢が高い人は雇用の流動性が低いから。

安田

戦力として計算しやすいと。

久野

ありがたい存在なんじゃないですか。若い子なんて教えたらすぐいなくなっちゃうケースが多いわけで。仕事もちゃんと真面目にやってくれますし。

安田

中小企業にも60代雇用を勧めてるんですけど。みなさん後ろ向きですね。やっぱり社長は若い子が好きみたいで。

久野

若い子がいっぱいいるってかっこいいじゃないですか。活気もあるし。

安田

もう無理でしょ。日本全体の平均年齢が50代になってきているわけですから。

久野

無理ですよね。

安田

気がついた時には60代の優秀な人は奪い合いになってますよ。

久野

また中小企業は出遅れる感じですね。

安田

定年を機に自分で商売する人って少ないんでしょうか。

久野

そこから自営になる人は少ないと思います。

安田

好きな商売をやりながら生きていくのも楽しいと思いますけど。

久野

「仕事で好きなことをやる」という概念がもうなくなってるんじゃないですか。「言われたことをちゃんとやる」という価値観で60歳まで来ているので。

安田

確かに。会社員として真っ当に働き続けて来た人たちですもんね。

久野

定年過ぎて「あなたが必要だ」って会社に言われたら、嬉しいと思いますよ。

安田

しかも現役時代と変わらない給料がもらえて。

久野

お互いハッピーだと思います。

安田

でも久野さんは雇わないでしょ?60代の人。

久野

いやいや、うちは結構チャレンジしてますよ。

安田

そうなんですか?

久野

ただ3〜4年経つといなくなっちゃう。仕事がハード過ぎたのかもしれません(笑)「年齢差別はしません」というルールにしちゃったから。

安田

60過ぎたらマイペースで働きたい人もいるでしょうね。週休3日にするとか、労働時間を減らして人数を増やすとか、会社も工夫しないと。

久野

フルタイムで働かないと生活が成り立たない人も多いです。物価も税金もどんどん上がっていくし。

安田

60歳を過ぎてもですか?

久野

晩婚ですし。40過ぎで1人目の子供が生まれると60過ぎてやっと大学に入る感じですから。

安田

確かにそうですね。

久野

本当の定年って75歳くらいでしょうね。

安田

75ですか!

久野

将来的にはもっと伸びるんじゃないですか。80歳とか。

安田

日本人は最後の10年は寝たきりと言われてますけど。

久野

これからは健康を意識する人が増えるかもしれません。80歳ぐらいまで働けるように。

安田

そうなったら国の医療費も削減できるし。税収も増えるし。いいことだらけですね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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