7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第31回「組合が雇用をなくす?」
第32回「女性管理職は必ず増える」
「女性の管理職が少ない国」って言われてますよね?日本は。
おっしゃる通りですね。
これだけ男に偏ってくるというのは、やっぱり企業カルチャーなんですか?
その論点を考える場合、まず新卒採用から見ていかなきゃいけないですね。
新卒採用ですか?
新卒の総合職ってかつては「ほとんど男性」みたいなイメージじゃないですか?
大企業はそうでしょうね。
男だったら辞令ひとつで、全国どこでも転勤させられる。で、仕事も結構ハード。だから、総合商社でも300人とか400人採ったら女子はたったの3人、みたいな。
まさに、そういうイメージです。
でもそれは昔の話です。
そうなんですか!
そもそも「そういう職種に女性を配置する」という発想がなかったじゃないですか、昔は。
なかったですよね。でも、今はあると?
今の話でいえば、新卒採用はむしろ、優秀なのは女子が多いんですよ。
じゃあ大手でも、女子の総合職は増えてるってことですか?
かなり増えましたね。
今、どのぐらいの比率なんですか?
会社にもよりますけど、半々に近いぐらいにはなってる企業もありますね。
なんと!
業界によっては、女子の総合職の方が多いところもあります。
そこまで進んでるんですか?
はい。たとえば人材ビジネスや生活関連とかは女子が多い。住宅メーカーとかも、めっちゃ多い。あと流通系とか、小売業とか。
ということは、そのへんの世代が40〜50代になってくると、女性管理職も増えてくると?
もうすでに、現場では結構増えてますよ。
そうなんですか?
女性のマネージャーは増えてます。伝統的な総合商社でも、だいぶ女性が増えました。
金融とかもですか?
銀行や証券はまだ少ないですね。保険は比較的多いかな。
なるほど。
結局、どれぐらい保守的で、堅い社風や業界かによるんですよ。
そういう業界でも変わっていきますかね?
女性のお客様が増えてますから。女性に対しては、女性の方がコミュニケーションが上手。
でも、転勤っていうことになると、男子でも「出世はいいから、地域限定してほしい」って子が増えてますよ。
増えてますね。
逆に、女子は「全国どこでも行きます」って人が増えてるんですか?
そういう層もいるんですけど、いま大企業って、いろんなリクエストを聞いてくれるようになってるんですよ。
それはどうして?
時代の流れじゃないですかね。人手不足がどんどん進んでますから。
そもそも何のために、全国異動させていたんですか?
「人事の公平性」っていうのと、「固定的な取引関係を継続するのはあまりよろしくない」みたいのが、銀行なんかではありますね。
ちなみに「夫婦共働き」は中小企業では普通ですけど。
「ダンナの給料だけじゃやっていけない」みたいな。
まあ、そうですよね。大手の場合はどうなんですか?ダンナさんの給料だけで生活していけそうですけど。
実態として、30歳以下、大手企業、夫婦共働き、めちゃ増えてます。
そうなんですか!
そうなんです。“Double Income Two Kids”で、2人合わせれば子ども2〜3人持てるじゃないですか。
でも共働きって、女性が大変そうですけど。
今、女性は結構融通利くんで。産休、育休、復帰とか、不利益もあまり被らない。
じゃあ、社内結婚とかも多いんですか?
大企業は社内結婚多いですよ。
その場合は、2人とも会社に残るんですか?
残ってますね。
むかしは結婚したら「奥さんの方が辞めなくちゃいけない」みたいな、暗黙の了解があったじゃないですか。
もう、この10年くらいそんなことはないですね。
むしろ会社としては「残ってほしい」って感じなんですか?
その通りですね。30歳以下ってまだまだ伸びしろがあるし、賃金に比べれば生産性が高いので。
じゃあ、残るのも復帰するのも、基本的には歓迎だと?
仕事ができる女子には、辞められる方が痛いです。
でも、そうなってくると、どちらか一人だけを転勤させるのは難しくないですか?そこはある程度、会社が配慮するんですか?
配慮してくれますね。異動させる場合は、夫婦一緒に異動させるとか。
そんなことまで、やってくれるんですか?
大企業もそのへんは凄くフレキシブルに、融通利くようになりましたね。もちろん会社によりますけど、平均値と言ってもいいと思います。
大企業なんて採用にぜんぜん困ってないのに、そこまでする必要あるんですか?
それだけのメリットがあるということですよ。
なぜでしょう?辞めさせてゼロから育てるより、継続してもらうほうが生産性高いってことですか?
もちろん、それはありますね。あと「人件費を抑える」ってことも考えてるんじゃないですかね。
ふたり雇ったら、人件費は増えませんか?
普通に雇うだけだったら、増えますね。
共働きなら、そこまで増やさなくてもいいと?
重要なのは世帯報酬じゃないですか。
生活するために?
住宅ローンを払って、子供をいい学校に行かせて、そこそこの生活レベルを保つために。
じゃあ、世帯報酬は保たれると。
世帯報酬で考えた方が会社は楽ですよね。
どうしてですか?
だって、一人に1500万円払うより、二人に1800万円払ったほうが元は取りやすいじゃないですか。
なるほど。一人当たりの報酬は抑えられると。
そこを抑えても世帯報酬は増える。
確かに。
旦那一人の報酬を増やし続けると、必ずどこかで見合わなくなるので。
どのへんで見合わなくなるんですか?上げ続けると。
45過ぎですね。
共働きの場合は、どうなるんでしょうね。
一人当たりの報酬を抑えられれば、元は取れると思いますね。特に女性の優秀な人は。
男はダメですか?
まあ、人によりますけど。男は50歳過ぎると燃え尽きる人が多いです。
燃え尽きる?
はい。子育てが終わって、ローンも払い終わって、「何のために、俺、働いてるんだろう?」みたいな。
重荷がなくなって、もっと仕事を楽しめばいいじゃないですか。
でも実際「人生の目的を見失った、おじさん社員」って結構いるんですよ。
見失うと仕事もできなくなりますか?
男は背負うものがなくなるとダメですね。新橋で夕方くらいから飲んでるおじさん多いじゃないですか?
確かに。じゃあ、女性はどうなんですか?
女性は結構、自分のために頑張れるんじゃないですかね。
子育てが終わって「逆にイキイキと働き出す」みたいな。
そんな気がしますね。旦那の黄昏を尻目に、女性管理職は増えていくんじゃないでしょうか。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。