7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第40回「すぐ採用したい会社は、もう負けている」
石塚さん、よく言いますよね?「有料求人媒体は、中小企業には向いてない」って。
その通りです。向いてません。
どうして、そう言い切れるんですか?
いちばん大きな問題は、求人認知に要する期間なんですよ。
期間?
仮に安田さんが「知名度の高い会社」の採用担当だったら、求人広告出す時どれぐらいの期間掲載しますか?
採用力のある会社だったら、1〜2週間ですかね。
でしょ?有料求人媒体って、それが基本タームなんですよ。
基本ターム?
料金設定も、すべてそのタームを元に設定されてるわけです。
だから中小企業には向かないと?
だって、知名度のない中小企業が「1〜2週間」で、認知なんてされるわけないじゃないですか。
広告枠を大きくしてもダメですか?
まずそもそも、大きな広告枠を出せる中小企業自体、少ないですよね?
まあ、確かに。せいぜい100万円前後しか、予算がないですからね。
100万って、結構「思い切って出しました」って金額ですよね?
はい。かなり思い切ってます。場合によっては「社運かけてます」みたいな。
ですよね。でも応募来ませんよね?
残念ながら、来ませんね。つまりそれは、掲載期間が短いことが原因だと?
そうです。
どうして期間が重要なんですか?
中小企業の場合2つ問題があって、まず「どんなことをやってる会社か」を理解するのに時間がかかる。
分かりにくいってことですか?
事業内容がよくわからない。たとえば全日空とかユニクロって言えば、何やってる会社か分かるじゃないですか。
まあ、みんな知ってますからね。
中小企業の場合「車のエンジンの、この部品を専門につくってます」みたいな。
それを聞いて「パッと仕事内容がわかる人」って、少ないでしょうね。
かなり少ないです。
じゃあ、仕事の面白さを伝えるのに、時間がかかると。
ひとつはそれです。
もうひとつは?
だって、そのターゲットが「転職活動をやってない」かもしれないじゃないですか。
やってない人は、ターゲットじゃないですよね?
やってない時は。
じゃあ、やり出すのを待つべきだと?
転職を考えるタイミングって、人によって違うじゃないですか。
そりゃあ、違いますよね。
「この1〜2週間に見てくれ」なんていうのは、広告を出す側の都合でしかない。
確かにそうですね。
ターゲットがたくさんいれば、誰かが見るんでしょうけど。
ターゲットが少ない場合は、その人が活動している期間にぶつけないと、意味ないってことですね?
そういうことです。
だってターゲットが「いつ」活動するか、分からないわけですから。
確かに。その気がない時には、そもそも見ないですもんね。
もちろん、プロとしては「キーワード」や「ノウハウ」を駆使して、スマホ検索にひっかかりやすくするわけですけど。
たとえば、どのようなノウハウがあるんですか?
たとえば、ハローワーク求人票の職種欄に「#(ハッシュタグ)」でキーワードをつなげる。あれ、実は私が開発したんですよ。
効果あるんですか?
結構効いてまして。それも含めてあらゆるノウハウを詰め込んでだいたい求人の8割ぐらいは、一定期間で完了しちゃいます。
8割も?中小企業の求人ですよね?
はい。そのかわり時間はかかりますよ。もちろん、あっという間に決まるものもありますけど。
早い場合は、どのぐらいで決まるんですか?
出した翌日に応募がありますね。でもそこは期待しないで欲しいです。中小企業は「短期決戦求人」をしちゃダメ。
向いてないと?
絶対向いてない。
でも中小企業ほど、焦ってると思うんですけど。
「短期決戦で求人しなきゃいけない」ってことは、その時点で間違ってるんですよ。
「明日から来てくれる人が欲しい」みたいなのは、その時点でしくじってると?
そのとおり。完全に後手に回ってます。
でも中小企業の採用ニーズって、突然現れるじゃないですか。
まず、業績がよくて増員するとしたら、見通しがあまりにも甘い。もっと事前に準備しなさいって話ですよ。
じゃあ、突然辞めちゃった場合は?
本来なら、辞める3ヶ月前、半年前に把握して、辞めさせない手を打たなくちゃいけない。
「それでも辞める」という場合は?
それだけの期間があれば、後任の採用に十分手が打てます。
突然「辞める」って言われた場合は?
コミュニケーションが取れてないってことですね。ろくに会話もしてないのに「辞めない」と考えてるなんて、厳しい言い方すると思い込みに過ぎない、ですよ。
じゃあ、半年後に人が抜けていくのは、手が打てると。「明日辞めます」とか「来週辞めます」って言われた時点で、アウトだと。
たまに、お客さんでもいるんですけど。はっきり言います。「無理です」って。
それでも「何とかして」って、言われませんか?
そうなったら「イチかバチか有料媒体やってください」って言いますね。
石塚さんは責任持てないけど?
けど「それやったら採れますか?」って必ず聞かれるんですよ。僕が売ってるわけでもないのに(笑)
でも石塚さんが手伝うと、結構すぐハローワークで決まったりするじゃないですか。
1週間で決まっちゃったりするのは、ミラクルなんですよ。
ミラクルは、どれぐらいの確率で起こるんですか?
全体の1割ぐらいですね。
結構あるじゃないですか!ミラクルという割に。
でも「いつミラクルが起こるか」は、分からないですから。
なるほど。じゃあ、石塚さんのオススメ期間は?
6か月。ハローワークだったら1回更新する感じですね。
1回更新?
はい。ハローワーク求人は掲載期間が最長3か月だから。
なるほど。ちなみに、その6か月間は、ずっと同じ原稿でいいんですか?
採用ターゲットが合っていて、原稿の出来が良ければ変える必要はないです。
じゃあ、3か月経ったら、そのまま更新するだけでいい?
はい。6か月過ぎて全く応募がなければ、採用ターゲットの設定を失敗してる。
そういう場合は、どうするんですか?
僕が作った求人票なら、無償で全面的に書き換えますけど。正直、今までにそういうケースはないですね。
すごいですね。じゃあ半年かけて採用すれば、中小企業でも人は採れる?
ターゲット設定を間違えなければ。
だから有料媒体は向かないと?
半年間もそれなりの広告枠で掲載し続けたら費用は百万単位じゃ済まないし、短期の掲載はギャンブルみたいなもんですから。
媒体会社って、そのことに気がついてるんですかね?
知ってて、言わないようにしてると思います。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。
2件のコメントがあります
ハローワーク求人、出してはいますが、全然ゼロですね!
興味あります!
コメントありがとうございます。本シリーズも参考いただきながら、求人票をブラッシュアップされてみてください。専門スタッフによる求人票のアドバイスも行っておりますのでご興味あればお問い合わせくださいませ!