さよなら採用ビジネス 第109回「二極化は進むよ、どこまでも」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第108回『採用事業はここが激変する』

 第109回「二極化は進むよ、どこまでも」 


安田

求人倍率がオイルショック以来の低水準だそうです。1.2倍。完全失業率もだんだん高くなってまして。

石塚

求人自体が消えちゃった業界もありますからね。

安田

求人自体が消滅ですか。

石塚

とくに飲食、ホテル、サービス、小売という求人は、軒並み止まりました。

安田

この先、失業者はどんどん増えるんでしょうか。

石塚

どうでしょう。コロナの影響を受けてしまった中小企業は控えるでしょうけど。

安田

直接影響を受けてないところも控えはじめましたよ。

石塚

中小企業ってマクロに引きずられるので。ドミノ倒しみたいになって、過度に求人を絞る会社もあります。経営感覚がちょっとズレてるわけです。

安田

ズレてますか。

石塚

あんまり報道されないけれど、積極的に採用してる会社も増えてるんですよ。

安田

じゃあ失業率が上がってるのは、就職先を選んでるからですか?

石塚

そうだと思います。いわゆるエッセンシャルワークと言われる、社会に必要不可欠な職業、たとえば物流の求人はいくらでもある。

安田

日本って、正社員を雇用するとなかなか解雇できないですよね。

石塚

はい。そういう法律ですから。

安田

その影響もあって失業率が上がりにくいはずです。アメリカなんて桁違いですから。

石塚

アメリカは20%ぐらい行くかもしれない。もう深刻ですよ。

安田

それに比べると日本はまだまだ失業率が低いです。労働法があるから解雇できないだけで、これから失業率がどんどん上がるんじゃないですか。

石塚

いやいや、労働人口が減ってるという事実は大きいですよ。求職する人の絶対数が減ってるので、失業率はそんなに上がらないと思います。

安田

コロナといえども?

石塚

いまはコロナでこうなってますけど。つい1月までは超人手不足で、あらゆる業界で「人が足りない」って言ってましたから。コロナで少し落ち着いてるだけ。1.2っていう数字はべつに驚くほどじゃない。

安田

この状態でも1を超えてるわけですからね。選ばなきゃあるってことですもんね。

石塚

そうです。選ばなければある。仕事自体はあるわけですよ。

安田

まだまだ危機的状況ではないと。

石塚

たとえばターミナル駅周辺のホームレスの数とか、河川敷の青テントの数とかって、そんなに増えてないでしょう?

安田

増えてないないですね。たしかに。

石塚

失業に関しては、社会不安になるほどの状況ではないと思います。

安田

確かに「職がなくなった」という深刻な話は、あんまり聞かないですね。

石塚

派遣社員や契約社員は、企業の防衛策として「いったんすべて終了する」というのはあり得るでしょうけど。

安田

でも派遣って、もともと派遣会社の社員じゃないですか。

石塚

そうですね。

安田

だったら派遣会社は切れないでしょ。雇用契約を結んでるので。

石塚

おっしゃるとおり。ただ事業が立ちゆかなくなれば話は別ですけど。

安田

じゃあここから、さらに失業率がガンガン上がるなんてことはない?1.2ぐらいでそろそろ止まるんですか。

石塚

求職に関して、そんな悲惨なことは起こらないと思います。

安田

へえ。そうですか。

石塚

僕の現場感覚ではそうですね。

安田

そろそろ求人案件も増えてくると。

石塚

さっきもふれましたが、いま積極採用してる企業さんは多いんですよ。

安田

たとえばどういう業界ですか?

石塚

たとえば製造技術系の会社。技術力が商品力に直結するような会社は、積極採用してますね。

安田

なるほど。そういう会社は「優秀な人をどれだけ取り込めるか」が勝負ですもんね。

石塚

はい。マスコミが脅かすから、手控える企業が増えてるだけ。積極策で一歩出たところはみんな成功してますよ。

安田

いま採用活動をやれば、ローコストで結構いい人がとれちゃうと。

石塚

とれます。

安田

でもそれに気づいてる会社は少ない?

石塚

多数派ではないだけ。たとえば新卒でも、理系採用なんかはかなり積極的ですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

オンライン面接を導入して、地方の理工系学生を狙いにいくとか。普段だったらなかなかとれないけれど、今はチャンスなので。

安田

オンライン面接ですか。その場合は採用した後も「リモート」になるんでしょうか。

石塚

新卒でリモート勤務って難しいんですよ。安田さんだって、ゼロイチの人をリモートで教えるって難しいでしょう。

安田

難しいですね。

石塚

リモート勤務って経験者じゃないと成り立たないんです。

安田

なるほど。

石塚

仕事の土台づくりをリモートでやるのは無理じゃないですか。

安田

ちなみに文系の就職状況ってどうなんですか?

石塚

厳しいです。

安田

やっぱり厳しいですよね。

石塚

今年からより厳しくなります。

安田

「バブル崩壊後よりひどくなる」とか「氷河期以下になるんじゃないか」って言われてますけど。

石塚

文系学生は「技術系の積極採用をやってる会社」にエントリーを変えるべき。

安田

採用してもらえますか?文系でも。

石塚

自分次第ですよ。「文系出身だけれど技術や製品に関わる仕事ができます」って、積極的にPRしないと。じゃなきゃ生き残れない。

安田

早めに自分で方向転換したほうがいいと。

石塚

実績がない文系学生はそれしかない。

安田

実績のある新卒なんているんですか?

石塚

学生時代に起業してB/S・P/Lを回したとことがあるとか。産学プロジェクトで広報やマーケティングをやったことあるとか。新規のマーケットをつくったとか。

安田

結構な実績ですね。

石塚

「売上をつくるのに、こういう経験をした」という実績。それがないと、僕だったらコンマ何秒で落としちゃいますね。

安田

厳しいですね。

石塚

それが現実ですよ。

安田

昔はゼネラリストとして「バランスの取れた人を育てる」ってことを、企業がやってましたけど。

石塚

企業もジョブ型採用にシフトしますから。ゼネラリストなんて役に立たない。

安田

これまで人気のあった「新卒・文系・上位校」というのは、どうですか。

石塚

やはりフツーの文系学生は厳しいです。

安田

じゃあ実績がない人はどうすればいいんですか。

石塚

エッセンシャルワーカーとして働くことを選ぶ。そうすれば、すぐにでも仕事できますよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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