2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第110回「変化できる経営者とは」
ポストコロナの企業対応って二極化して来ましたよね。採用もリモートワークも。
個人的には二極化というより多極化だと思ってます。分かりやすい白黒っていうよりは、いろんな立ち位置やポジショニングを企業が主張し始めてる。
単に人を「とる」「とらない」、リモートを「やる」「やらない」の問題ではないと。
おっしゃるとおり。たとえば新卒も採用する・しないの話じゃない。リモートワークを導入するなら、未経験の人を採用すること自体が難しくなるし。
新卒でいきなりリモートは難しいですよね。
未経験者採用はリモートワークをメインにするのであれば難しい。そういう場合は「誰かの家に1か月下宿しろ」みたいな、“社内弟子入り制度”が生まれるかもしれません。
弟子入りですか!受け入れる方も大変ですよ。でも1か所に集めての「ぎゅうぎゅう詰め研修」は、しばらく無理でしょうね。
難しいとは思います。でもそこも多極化していくと見てます。
リアルな研修を継続する会社もあるってことですか?
「うちは職務上リモートができない」という物流の会社とか。密は避けるけど、マンツーマンの研修が必要ってことになれば、やるでしょうね。
やらざるを得ないと。
やらなきゃしょうがないから、いろんな選択肢が出てくる。完全にどっちかっていうことではなく。今後は選択肢がものすごく増えると思う。
多極化というご意見ですけど、「コロナ前に戻る」という会社と「戻らない」という会社と、大きく2つに分かれませんか。
おっしゃるとおり単純化するのであれば2つですね。「未来志向で変える会社」と「従来どおりの延長線で考える会社」。
で、未来志向の会社は多極化していくと。
そういうことです。
「元に戻る」と思っている会社は一極化ですよね。
崖に向かって一直線です。
結構ありそうですけどね。「元に戻る」と思ってる会社。
これ実名出していいと思うんですけど、伊藤忠商事って僕は未来志向の会社だと思ってたんですよ。だけど緊急事態宣言が明けてすぐ「全社員出社しろ」って言ってる。
未来志向ではないと。
青山の本社ビルも「賃貸に出せ」ぐらい斬新なことをやるかと思いきや。いつもどおりっていう。
そもそも伊藤忠ってそんな斬新なイメージありますか?
伊藤忠って会社で朝食出すんですよ。つまり「早く来て早く帰れ」っていう。経験者採用も総合商社の中ではいちばん早く取り入れた。総合商社って新卒純血主義が多いから。
つまり変化をいとわない会社ってことですね。
おっしゃるとおり。
それでも「全員出社させる」ってことは、元に戻ると信じてる?あるいは、さらに裏をかいた新しいやり方なのか。
どうなんでしょう。僕は古さを感じましたけどね。もし裏をかくならもっと伊藤忠なりの新しさが出てくるはず。
歴史が長い会社や規模が大きい会社ほど、ベクトルを変えにくいと思うんですけど。大手はやっぱり難しいんじゃないですか。
「規模は関係ない」と僕は見てます。
へえ。そうですか。
大手でも、たとえばIBMやリクルートは「リモートワーク続行中」じゃないですか。
確かに。
中小って、いかにもフレキシブルな対応ができるように思うけど、そうでもなかったりするし。
言えてますね。じゃあ業界によって対応が別れると。
いや、業界も関係ないですね。
じゃあ何によって変わるんですか。
経営者の考え方ですね。
年寄りはダメってことですね。
いち早く「完全リモートワークの子会社」をつくった社長がいますよ。その人はなんと昭和20年生まれです。
へぇ~。
規模も大きな会社です。年齢も業界も関係ない。
社長の価値観というか、性格というか。それ次第だと。
経営者の感性だと思いますね。
見分ける方法はあるんですか?「気をつけたほうがいい」「早く見切ったほうがいい」という頭の古い経営者。
うーん、あえて言うなら「真面目な社長」じゃないですかね。
真面目?
はい。
不真面目なほうがいいってことですか。
「ちょっといい加減」ぐらいがいい(笑)メイン事業に対しても「元々はこうだけど、どうなるかわかんないし」ぐらいな。変なこだわりや執着が少ない人。それが未来志向の経営者だと思う。
あえて“残存利益”を狙うという戦略はダメですか?競合が減れば「生き残っていける」って、石塚さんも言ってましたよね。
そうなる可能性もありますし否定もしません。ただ、いまみたいに業界・業種・業態の境目がなくなってくると、思わぬところから競合が現れるので。
確かに。
いずれにしても変化をしながら生き残らなきゃいけない。地方で周りがどんどんやめていくのは、ある意味ねらい目なんですけど。
なにも工夫しないと生き残れないと。
それなりに規模が大きなマーケットは、新たなライバルが必ず出現します。それもどこから現れるか見当もつかない。だから常に変化を考えながら、マーケットの残存者利益を取っていく。
同じことを繰り返すだけでは、もう生き残れないと。
そう思います。逆説的ですけど「変化し続けるからこそ、変わらないで済む」という。
そういう経営者って少ないですよ。せいぜい2割ぐらい。残り8割は通り過ぎ去るのを待ってるだけ。
おっしゃるとおり。多くの経営者は「目の前の収益を戻すこと」だけに集中してます。
それでは乗り切れないですよね。
難しいでしょうね。戻ると信じたいんでしょうけど。
表参道なんか見てると、だんだん人通りも戻ってきましたけど。
地域によっては戻り始めてますね。
すでに満席で入れないお店もあります。10万円もらって「ぱっと使うか!」って人も増えたんじゃないですか。
はい。「なんかコロナでお金が増えちゃった」って人もたくさんいます。
ニュースでは悲惨な話ばかり出てきますけど。貯金が増えた人も多いはずですよね。
使う機会が減りましたから。せいぜい家飲みでちょっと贅沢するぐらいで。
だけど石塚さんの考えでは、このまま戻りはしないと。
これで終わりじゃないですから。新たな感染症リスクも出てくるかもですし、そもそも消費者の生活様式が激変しましたから。
確かに。
これを警告と捉えて「常に新しい変化対応」を考えるようになるか。あるいは「ああ、晴れ間が差してきたな」って安心しちゃうか。
安心しちゃう会社はダメだと。
その半分ぐらいは、次の10年でなくなっていくでしょうね。
個人で出来る、採用支援。
\ 石塚本人がスキルを伝える /
石塚求人大学開講 受講生募集中
詳しくはClick
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。