第140回「表に出てはいけない人」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第139回「バルミューダが目指す世界」

 第140回「表に出てはいけない人」 


安田

オリンピック組織委員長の森さん。またしても失言でやめることになりましたね。

石塚

はい。

安田

テレビを見ても、ネットを見ても、「やめろ、やめろ」のオンパレードで。

石塚

そういう感じでしたね。

安田

ただ経営者には「あんなの、ただのいじめだ」って意見が結構多くて。

石塚

私の周りも多いですよ。

安田

「本質的なところを見てない」とか「揚げ足をとってる」とか。経営者には擁護する人が多いです。

石塚

経営者って清濁併せ飲まなきゃいけない役回りだから。シンパシーを感じるんでしょう。

安田

森さんとの研修旅行に参加した知り合いがいるんですけど。「人として本当にまともで、とてもすばらしい人だ」と言ってました。

石塚

それは事実だと思います。

安田

ということは、人間的にはとてもすばらしい人だと。

石塚

「半径3メートルの男」って言われてるらしいです。

安田

どういう意味ですか?

石塚

もう、みんなやられちゃうらしいんですよ。

安田

近くにいると心酔してしまうと。

石塚

そうじゃないとあの年齢で今あの地位にいれないと思う。べつに議員でもないし。

安田

確かに。

石塚

元総理大臣ではあるけど、決して評価されるような総理でもないし。在任期間も短いし。

安田

総理のときも似た感じでしたよね。失言が多いというか。とにかく人気がなくて、世間の評判も悪くて、引きずり下ろされた感じ。

石塚

ええ。あっという間に辞めちゃいましたよね。

安田

本当はいい人かもしれないですけど。「あの立場にいる人が、この程度のことを考えずにしゃべっちゃうのか」ってことが不思議です。

石塚

全文読みましたけど、いちばん違和感を感じたのはマネジメントの部分ですね。

安田

マネジメント?

石塚

「会議が長引く」って、会議をファシリテートする人の能力次第じゃないですか。

安田

確かに。

石塚

たとえば安田さんのファシリテーションって、自然に時間内にあるべきところに落とし込んでいくじゃないですか。

安田

お褒めいただきありがとうございます。

石塚

いや本当に。無駄に延びないですよね。

安田

そこは意識してます。

石塚

変に自己主張することもないし。でも安田さんのキラッと光る部分が「ああ、なるほどなあ」ってみんなに深く刺さる。

安田

ちょっと褒めすぎです(笑)

石塚

何が言いたいかっていうと、ファシリテーション能力が会議の生産性や長さを決めるわけです。女性の比率とか別に関係ない。

安田

なるほど。

石塚

「普段人柄がいい」とか「カリスマ性がある」とかは別の話。僕はいちばんそこが納得いかないです。

安田

人間的には魅力的かもしれないけど、能力は低いってことですか。

石塚

おっしゃる通りです。会議を取り仕切る能力が高くないんだと思いました。

安田

失言しちゃうのも能力ですか。

石塚

もちろんですよ。教養がないんです。

安田

教養がない?

石塚

彼の発言を見ていて、哲学や歴史からくる教養を感じたことがない。

安田

かなり偏ってそうですよね。

石塚

英語でいう「statesman」という感じを受けない。「politician」つまり「政治屋」という感じ。

安田

政治屋ですか。

石塚

政治屋で、大きな利害対立とか、大きな利権を取りまとめてくれて。みんなの顔が立つように、みんなが食えるようにしてくれる人。

安田

なるほど。

石塚

それをやってくれるから「5%ぐらい森さんのところに入ってもかまわない」っていう。森さんのおかげでみんな仕事が回ってくる。そういう機能としては超一流。

安田

裏方に向いてるんですかね。

石塚

おっしゃる通りだと思います。総理よりも、総理を支えるキングメーカー的な役回り。小泉内閣のときの後見人が森さんだったじゃないですか。

安田

そうなんですか。

石塚

小泉内閣があれだけ続いたのは、森さんがデーンといたから。陰で調整してたんですよ。

安田

菅首相も安倍さんを支えてた頃はよかったですよね。

石塚

おっしゃる通り。縁の下の力持ちが表に出ちゃったから。屋根にのぼって、誤って足を滑らせて、落ちちゃった。

安田

人間誰しも適性がありますよね。

石塚

おっしゃる通りです。

安田

「国民に人気がある」とか「国際的に評判がいい」とか。これも適性ですよね。

石塚

とても重要な資質ですね。

安田

たしかに揚げ足を取ってるところもありますけど、明らかに謝りかたが下手すぎるというか。

石塚

下手すぎる!(笑)謝罪会見になってない。

安田

もうちょっと上手くやればいいのに。

石塚

正直な人なんでしょうね。

安田

なんでも正直に言えばいいってもんじゃないです。みんなの前で後継者を指名しちゃうとか。ちょっと感覚がズレすぎですよ。

石塚

83歳であれは痛いです。

安田

あのポジションに求められるスキルを、持ってなかったということでしょうね。

石塚

おっしゃる通り。

安田

裏方だったらよかったのに。

石塚

そこを一緒くたにして周りが持ち上げちゃうんですよ。

安田

なるほど。でも経営者にもいますよね。仕事はできるけど社員にはまったく人気がない人とか。

石塚

います、います。

安田

そういうところが共感を生むんでしょうか。

石塚

日本的といえば日本的ですけど。能力と人情の部分をごちゃ混ぜにしてはダメ。

安田

きっと人情味はあるんでしょうね。

石塚

ポジションに必要な能力をシビアに評価するって、日本人は嫌いなんでしょうね。大会組織委員長としてのスキルはまったくないですから。

安田

「1円も給料もらわず仕事をしてた」って言いますけど。

石塚

何をおっしゃるやら!議員やめてから何億も政治団体に入ってるわけでしょう。あのお金はいったいどこから来てるんですかっていう。

安田

給料は取ってないけど、ちゃんとお金は流れてくるようになってると。

石塚

はい。彼はやっぱりキングメーカーでありフィクサーなんですよ。

安田

フィクサーなら裏で暗躍しないと。

石塚

おっしゃる通り。表に出ちゃいけない人です。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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