2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第142回「採用ビジネスで食える人数」
個人で採用ビジネスをやってる方が、私の周りには多くて。
私の周りも多いですよ。
個人レベルの小さなビジネスなら、まだまだ採用で食べていけますよね。
はい。いくらでも仕事がつくり出せます。
今はコロナもあって大変でしょうけどね。
いやいや。採用業界はぜんぜんしんどくないですよ。
え!しんどくないんですか?
ぜんぜん。まあ、僕はいわゆる採用業界とはちょっと違うフィールドにいますけど。
石塚さんは“さよなら採用ビジネス”ですもんね。
はい。採用業界の周辺居住者なので(笑)だから事情はちょっと違うけど、採用業界の本線もべつに下火じゃないですよ。
コロナで「採用の仕事が減った」とか「合説ができなくなった」とか、言われてましたけど。
それはコロナ初期の話ですね。
確かに最近はリアルイベントも行われてるみたいですね。じゃあ採用マーケット自体は好調なんですか?
リクルートもマイナビも不振だって話は聞いてないです。少なくとも僕レベルの仕事で受注が落ちるってことは、まったくないですね。
なるほど。じっさい影響があったのは最初の何か月ぐらいですか?
去年の連休明けから6月ぐらいまでじゃないですかね。
それ以降は普通に戻ってきている?
はい。外食、飲食、旅行代理店、ホテルぐらいですから。食らってるのって。
それ以外の業種に関していうと、あまり影響はない?
むしろ積極採用しているところが、どんどん増えてますね。
へぇ~。じゃあ業績もいいってことですか?
おっしゃる通りです。
飲食業界の採用に特化してる人は、かなりしんどいみたいですけど。
そこはしんどいでしょうね。ちょっと違う方向に舵を切った方がいいと思います。
ですよね。面接の代行に特化するとか。もしくは人事部を丸ごとひとりで引き受けちゃうとか。
それはいわゆる「採用プロセスを切る」という方向ですね。新卒であればエントリーシートを書くとか。
エントリーシートでも飯は食えますか。
はい。これだけでもたぶん100人ぐらい、すぐにビジネスになると思う。
100人も?
エントリーシートのプロが100人ぐらい登場しても、全員が食えるだけのマーケットはあります。
ということは「エントリーシートに特化した100人の会社」でも成り立つってことですか?
それだと100人食わすための管理コストが乗っちゃうじゃないですか。
そうですね。
それをひとりずつバラして、新卒学生の目線で「いちばんやってほしいサービス」に絞り込む。
たとえばどんな?
学生をプロの視点で客観的に見て「マッチする業界に向けてエントリーシートを書く」というニーズとか。
学生からお金取れますかね?
取れます。だって親に請求して払ってもらえばいいから。
なるほど。
ひとり20万でも払いますよ。
ほんとですか?
払います、払います。
それはエントリーシートを書くだけで?
エントリーシートを書いてあげて、もろもろのアドバイスもして。20〜25万は余裕で払う親の層があります。
へえ〜
10人で250万じゃないですか。いくら欲しいのかによりますけど、仮に年収1,000万だったら40人ですよね。
ですね。
そんなにしんどい仕事でもないですよ。
なるほど。他にはどうですか?小さな採用ビジネス。
たとえば人材紹介で「ここが専門」という人は、給料が高いほうにばかり行くじゃないですか。
手数料も高いですからね。
もう少し年収の低いゾーンに絞る。400万〜500万の採用支援を企業側に立ってやる。まさに僕がやってるところですけど、ライバルいないですからね。
そうなんですか。
競合したことないですよ。
へえ〜
みんな年収が高い方にばっかり行くので。 “相見積もり”になったことないです。
石塚さんはハローワークを切り口にやってますけど、いろんな切り口で無数にできるってことですか?
そうです。たとえば、これからだと「移住と仕事を組み合わせる仕事」とか。いくらでもできるじゃないですか。
なるほど。
あるいは「リモートワーク専門の紹介会社」も出てもおかしくないですよね。
いくらでも出てきますね。
じっさい、個人が食べていける採用の仕事なんて、いくらでもありますよ。
今後いろんな業界でビジネスが個人化していきそうですよね。
間違いなくその方向でしょう。
業界経験者が独立していくのか。それとも他業界から入ってくるのか。採用業界ではどちらですか?
どちらもあると思います。採用業界出身者は「その領域を知ってる」という強みがある。だけど「大きな設備装置がないと仕事ができない」という最大の弱みも抱えてる。
採用インフラがないと応募者を集められないってことですか?
そうです。リクナビやマイナビがないとダメだとか。巨大な紹介登録システムがないとダメだとか。
Indeedやハローワークを活用するっていうのはどうなんですか?
私ごときでもできることなので(笑)十分可能です。
石塚さんは「採用ビジネスのスクール」をやってますよね。ICUでしたっけ?
はい。石塚求人大学。略してICU(笑)
そこではハローワーク以外のノウハウも教えてもらえるんですか?
もちろん。ご自身の強みをベースに考えれば、立ち位置は無数にあるので。
それを一緒に考えてくれる。
ヒントやアイデアを差し上げます。プロセス特化型よし、領域特化型よし、あるいは人の移動に着目するもよし。まだまだ無数にチャンスは転がってますよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。