星野リゾートさんが「自社の倒産確率」を社員に発表しました。

星野さんらしいな、うまいなと思います。

すごい優良企業ですけど。さすがにコロナで倒産の危機みたいなのがあったのか。

基本的には社内施策ですよ。

社員さんも「うち大丈夫なのか？」という不安があるらしくて。

でしょうね。この状況ですから。

で、社員さんに「うちはこのままだったら〇〇％の確率で倒産する」って発表しちゃった。

はい。じつにうまいと思います。

うまいですか？確かに記事では「逆に社員が安心して働くようになった」とは書いてありましたけど。

細かく見ればいろんな反応はあるんでしょうけど。総じて良い結果になってると思います。

「このままいくと、いつキャッシュがなくなる」みたいな発表ですよ。

それを共有したことによって「がんばらなきゃいけない」という気になった。がんばった結果が「ああ、成果に結びついてる」という実感もある。いい施策です。

何年も先まで「資金繰りが見えてる」中小企業なんて、ないですよね。

ないですね。

だからやろう思えばどこでも出来ます。「このままいったら、うちは半年後の倒産確率が〇〇％ですよ」って。

星野さんみたいに割り切れる社長って、そんなにいないから。

まあ怖いですよね。逆に社員がやる気を失くしたり、辞めちゃったり。

社員の意識を変えるにはいちばんいいと思うけど。

私は会社をつぶした経験があるので、よく知ってるんですけど。不安になると社員って営業できなくなるんですよ。お客さんに勧められなくなる。

そういう人も出てくるでしょうね。

「お客さんに迷惑かけたらどうしよう」って。仲がいいお客さんほど勧めにくい。営業できないから売上が下がり、さらに不安になって、さらに売れなくなる。

マイナスの連鎖ですね。

倒産確率なんて発表したら「そうなるんじゃないか」という恐れがあります。

これは採用から考えるべきなんです。

採用から？

はい。どういうタイプの社員を集めていくかが大きく影響する。

へえ〜

いわゆるソーシャルスタイルでいうヒツジ型は、面倒なことや難しいことに後ずさりする。このタイプの社員が多いとこういう施策はマイナスになる。

なるほど。

難しいことに対してチャレンジングな姿勢が強いのがライオン型。このタイプの社員、もしくはサル型の社員をたくさん集める。

サル型とは？

ワクワク感で何でも楽しむ、何でもプラスに感じてしまう社員。そういう社員が多ければ逆に「こんなにピンチだからこそ、俺がヒーローになってやる」ってなる。

なるほど。

すべての施策は、どんな社員がいるかによるんです。

そういうタイプが日本人に多いとは思えないんですけど。安定志向で「守ってくれるなら言われた通りやる」って人が多そう。

国民気質という意味ではおっしゃる通りですね。

コロナでも「国は何をしてくれるんですか？」って、みんな思ってるし。政治家も「国民は何をしてくれるんですか？」って言うばかりで。

だから採用が大事なんです。

ライオン気質の人ばっかり採用できますかね。

そういう社風であることをしっかりオープンにすること。その結果やめていく人は逆にやめてもらったほうがいい。

それでも組織は成り立ちますか。

直接雇用で足りなければ外注するなり、契約形態を変えるなりすればいい。

なるほど。

で、取引先にも正直に言う。「うちはいつも倒産確率を示しています。だからがんばるんです」って。

お客さんが不安になりませんか。

日本人って判官贔屓だから。「なるほど。だったらうちも付き合うよ」という気質があるんです。

へえ〜

財務内容をオープンにするのはメリットのほうが大きいです。

だけど新卒の時点で「半年後にキャッシュアウトする」とか言われたら、そこに入ろうとは思わないですよ。

採用のやり方次第ですね。もう終身雇用はやめたらいいと思う。最長10年までの契約社員にすべきです。

やっぱりそこですか。

「2年契約でこういうピンチを味わってみないか」って言ったら、「いい経験だから、ちょっとやってみよう」って人もいるはず。

日本人には少なそうですけど。でもそうなるべきだとは思います。

かなり高いハードルだけど越えなくちゃいけない。

超える気あるんですかね。学校教育を見てるとそう思えないですけど。法律もそうなってないし。

いずれ、そちらに向かわざるを得なくなります。

できるかなあ。

みんな忘れてますけど、日本人って元々壊してつくる文化なんですよ。

そうなんですか？

関東大震災で崩れても、東京大空襲で焼けても、あっという間に復興しているじゃないですか。

自分で壊したわけじゃないですけどね。

一回壊した方がいいです。

今の日本人がはたして何割ついてこられるか。

我々は政治家じゃないから、全員を救済する必要はないと思う。行動変容するきっかけを会社がつくればいいんです。

政治家では、もはや何も変えられないですもんね。

『宇宙戦艦ヤマト』もそうじゃないですか。「白色彗星が近づいてきて、地球滅亡するかも」っていう地球の危機からすべてが始まった。

やっぱ外的環境ですよね。日本人の場合は。

こんなに激しく外的環境が変化するときにこそ、マイナスを共有して前に進むべきなんです。

そこは大賛成です。経営者は怖いでしょうけど。

怖いけど、やらないともう企業はもたない。

白色彗星が来たら慌ててやるんでしょうね。

いやいや。もう、すぐそこまで接近してますよ。